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『心霊探偵八雲 魂の行方』本編第7巻 神永学(著)を語ります!

名言がありました!

P308に名言があります。
後藤の嘆きに対して、八雲が意見するような形になっています。

それは、犯罪者への八雲の憤りのようにも聞こえます。
傲慢な人間に対する戒めの言葉でもあるように思います。

心霊探偵八雲7 魂の行方

斉藤八雲:大学生。死者の魂を見ることができる。
小沢晴香:八雲と同じ大学に通う学生。
後藤和利:刑事。
石井雄太郎:後藤の部下。
大森真人:教育実習の際、晴香が担当したクラスの児童。

【序章】
逃げてくる女性
女性と一緒に逃げてくる子供

【本編】
斉藤一心:八雲の叔父
斉藤奈緒:後藤の養女になる
後藤敦子:後藤の妻
英心:一心の師匠
土方真琴:新聞記者
小沢恵子:晴香の母
小沢一裕:晴香の父
宮川英也:刑事課長
畠秀吉:監察医
吉井:真琴の大学の先輩
大蔵:鬼無里資料館の職員
若林:長野署の刑事
栗田:長野署の刑事
智也:真人の友達
由美子:真人のクラスメイト
由美子の祖母
七瀬美雪:両眼の赤い謎の男に心酔する
東野弘之:護送車を運転していた刑務官
矢野:刑務官
両眼の赤い男

 

4巻で登場した大森真人君が、再登場します。
長野に引っ越した真人は、優しくて温かい伯父夫婦に引き取られ、大切な友達にも支えられ、幸せな日々を送っていました。

ある日、遠足で訪れた「鬼無里」で心霊現象を体験することになり、その後、友達が神隠しに遭うという事件に巻き込まれます。

当然、真人は晴香に連絡をとり、助けを求めました。
そして八雲・晴香・後藤の3人は、真人を助けるべく、一路長野へ向かいます。

時を同じくして、東京に残された石井のもとに、七瀬美雪を乗せた護送車が事故を起こしたという連絡が入り、宮川とともに捜査に乗り出します。

美雪は逃亡し、その逃亡には両眼の赤い男が関わっていました。
本巻では八雲のルーツがまた新たに紐解かれます。

【序章】
第2幕の幕開けとともに、新たな謎をはらんだエピソードから始まります。
謎の女性と子供が、誰かからなのか何かからなのか、まだわからないのですが、命がけで逃げるシーンが描かれています。
この親子は、いったい、どこからきて、どうなっていくのか、物語全体を大きく揺るがすエピソードになります。

【第一章 神籬】
一心を失った八雲と晴香、後藤夫婦と奈緒の近況が語られています。
それは、嵐の前の穏やかなひと時でした。
ですが、穏やかな時間はそう長くは続きません。
心霊現象に巻き込まれてしまった真人を救うため、八雲・晴香・後藤の3人は、真人が住む長野へ向かいます。

一方、東京に残された石井は、七瀬美雪が逃亡したことを知り、後藤が不在のまま、宮川とともに捜査へ乗り出します。

【第二章 鬼女】
後藤不在のまま、東京で捜査を続ける石井は、独自のプロファイリングで、美雪の行方を追います。
ですが、美雪の行動は、石井には到底理解のできない常軌を逸したものでした。

一方、長野チームは、八雲と後藤、晴香と真人の2チームに分かれて、それぞれの捜査を行い、過去に起こった2つの事件に行き当たります。

【第三章 解放】
過去に起こった2つの事件、真人が遭遇した心霊現象、そして七瀬美雪の不可解な行動、それらの事件をつなぐ糸は、八雲にありました。
八雲は、真人を救い、事件の裏に隠された真実を突き止め、悲しい事件の犠牲になった魂を救うために動きます。

【終章 その後】
事件を解決に導き、真人の日常が戻ったことを確認した八雲と晴香と後藤は、長野を後にします。
今回、東京に残された石井は成長し、七瀬美雪の行動原理を掴み始めました。

【添付ファイル 同乗者】
長野からの帰り道、まだ長野を出てもいない場所で、後藤と晴香が死者の魂に遭遇します。後藤の後藤らしい優しさが伝わるエピソードでした。

【あとがき 作者:神永学】
神永先生自身と、登場人物の様々な親子の形について、語られています。

 



感想

八雲がほんの少しだけ、変化したような気がしました。
もちろん、いい方向にです。
ちょっとあか抜けたというか、明るくなったというか。
雰囲気が、八雲の体からでるオーラが、柔らかくなったような感じがしました。

八雲と晴香の関係も微妙に変化したように感じました。
あくまで微妙にです。
あいかわらず恋人未満のままですが、前より距離が近いような気がします。

ただ、互いにその先へは踏み込まないようにしているようにも見えます。
これまでの、心地のよい関係を壊してしまうのには、かなりの勇気が必要です。
完全に壊れたら離れ離れになってしまいますからね。

心地よい関係のままのほうが楽だと思うのも当然です。

外野がガヤガヤとうるさく、勝手に盛り上がっていましたが、本人たちにとっては簡単なことではないんです。
いつかきっと、先へ進むきっかけが訪れると信じたいところです。

さて本巻では、八雲のルーツがまた1つ明らかになりました。
辿れば辿るほど、晴香に近づいていくような感じもします。

そして敵はあいかわらず手ごわいです。
女一人に大の男が何故かなわないんだ?という疑問が沸々とわいてきます。

この分だと、美雪を捕まえることは不可能な気がしてしまいます。

そして後藤です。
意外に子煩悩で、かなり面白いです。
後藤家が幸せに包まれているようなので心から良かったと思います。

今のところ父親が狙っているのは八雲だけのようですが、奈緒が狙われないという保証はどこにもありませんし、そうなると敦子も危ないのかもしれません。

敵が何を考えいつ動いて来るのか、受け身側としては全く予測できません。
だからこの調子で毎日、早めに帰宅することを後藤にお勧めしたいです。

最後に石井です。
本巻ではまた、大きく成長したように見えました。
石井はそもそも、とても素直な人間なのでしょう。
素直だからこそ、善意も悪意も受け入れることはなく、そのままの事実を受け止めることのできる人間なのでしょう。

親子の形

本巻は、いろんな意味で、親子の関係性を考えさせられる物語でした。

血がつながっていなくても、子を愛す親もいます。
血がつながっていても、実の子を愛せない親もいます。

かく言う私も、母との関係は、順風満帆と言えるものではありませんでした。
子からすると、親の気持ちを想像することが難しかったからです。

なぜ、母が厳しい人間なのか、母がどんな幼少期を過ごし、家族とどんな関係だったのかを、想像することはできなかったからです。
そもそも、子供の頃は、それを想像するという概念すらありませんでした。

親は絶対的なもので、正しいものと思っていました。
親だって間違えることもあります。
職場や生活するコミュニティの中で、孤立したり、嫌な思いをしたり、時には傷ついて帰ってくる日もあったのだと思います。

ですが、子には、親の事情を知らせないのが、親の務めでもあったのでしょう。
今なら、母の気持ちや、母の言っていたことがわかります。

気づくのはいつだって、何もかもが終わった後なのが、悔しいです。

親は初めから親だったわけではなく、子はいずれ、親になります。
ですが、それぞれの親と、それぞれの子には、新しい事情があり、別々の考えを持って生きているのです。

1つとして、全く同じ親子の関係というのは存在しないのだと思います。
親子の関係は、親子の数だけ存在するのではないでしょうか?
真実は人の数だけ存在するという考え方と、ある意味、同じです。

過去のことは、もう仕方がありません。
この先、自分がどうやって子供たちと接し、どうやって生きるのかが大切です。
自分の生き方を見つめてみる時間を過ごすことができました。