kei-bookcolorの文庫日和

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『バチカン奇跡調査官』シリーズ11・12 『独房の探偵』『悪魔達の宴』藤木稟(著)の感想を書きました!⑥

平賀兄弟の魅力

本作の主人公:平賀・ヨセフ・庚は、どっからどう見ても不思議ちゃんキャラだと思います。
もちろん本人は全く気付いていませんし、たぶん、至極まっとうな人間だと思っていることでしょう。
それは大きな勘違いです。

よって普通の感覚の人たちに不快な思いをさせたり、怒らせることもしばしばなんです。
ロベルトが間を取り持っているから、なんとか調査も毎回乗り切れているのだと思うんです。

そんな平賀ですが何故か、天才とか変人とか、とにかく普通じゃない人に愛されてしまう性分のようです。
凡人には理解できない魅力が平賀にはあるのです。

例えばジュリアです。
またはローレンです。
世界的に有名な大物犯罪者の2人に、溺愛されています。

次に弟の良太についてです。
良太は、本当に天使のような存在です。
存在自体が奇跡のようにも感じます。
良太が直面している奇跡について、兄が知らないということが少し残念でもあります。
平賀が調査すべき奇跡としか思えません。

良太は、それこそ、世界中の人からも愛され、天使からも悪魔からも死神からも愛されそうなほどの清らかさを持つ少年です。

そして良太がこの世にいてくれることこそが、兄の生きる原動力になっていることも確かです。

良太は、誰にも言えないほどの不思議な体験をしています。
兄のほうもシリーズ7作目の『バチカン奇跡調査官 天使と悪魔のゲーム』で、不思議な体験をしている男性と出会った話をしていました。

美しく清らかなこの兄弟が、互いに持った別々の魅力と能力から、世界を魅了し、世界から魅入られ、世界を守るために存在しているかのようなイメージを醸し出しています。

良太の病気が改善し、1日でも長く生きる未来が来ることを読者としては願うばかりです。

独房の探偵

平賀とローレンが表紙です。
平賀は今の平賀のようですが、ローレンはだいぶ若く見えます。
題名の通り独房のようですし、ローレンは囚人服を着ているのでしょう。
題名からしてもローレンの活躍が語られるという期待が持てます。

本巻は短編集です。

シンフォニア 天使の囁き
最初のお話では、平賀の弟:良太が登場します。
朝、通勤電車の中で読んだのですが、思わず泣きそうになる場面があり、涙をこらえるのが大変でした。

兄以上に純真で清らかな心を持った弟でした。

そしてロベルトにとっても、大事な出会いとなりました。
シリーズ7作目の『バチカン奇跡調査官 天使と悪魔のゲーム』を紹介したときに、触れましたが、本話で、ロベルトを救った友人からのメッセージが届きます。
それは、運命的で幻想的な瞬間でもありました。

良太は人々の心を救うために存在している少年なのだと思います。
良太と言う存在は、何よりも尊く、かけがえのないものです。

良太は本編には全く関係のないキャストなんですが、そうとも言い切れないような予感がするんですよね。

ペテロの椅子、天国の鍵
次のお話はサウロが主人公です。
サウロと前法王と前々法王との関係が見えてくるお話でした。

サウロがどれほどのキーパーソンなのか、改めて実感できました。
サウロこそが本作の法王になったほうがいいのでは?
と思うほどに、重要な人物なんだと思いました。

魔女のスープ
次のお話は、そのままずばり、魔女のスープを作るというお話です。

平賀の行動がおかしくて、つい、吹き出しそうになりました。
平賀はいつでも、どこでも、何をしていても、天然で猪突猛進で、、そしてその行動は読者にコミカルな感覚を与え楽しませてくれます。

こんな趣味のような調査でも、二人一緒なんだなと思うと、何だか微笑ましくもなりました。
そして、やっぱり味噌は体にいいものなのかなとも思いました。

独房の探偵
最後は、副題にもなっている独房の探偵です。
予想にたがわず、もちろんローレンが主人公です。

ローレンはまだ平賀と出会う前のような感じがします。
だいぶ若いです。
そして、どこにいても何をしていても、ローレンはローレンなんですよね。

天才であることに違いはないし、どんな場所にいたとしても、全部、ローレンの意思でそこにいるんです。
そして、何年もかけていろんな人間を操っているんです。

正義といった感情は持ち合わせてないように思われます。
ただただ、自分の自己満足のためにすべては存在している。
地球はローレンを中心に回っているというわけです。

恐ろしくもあり、心惹かれるものもあり、複雑な心境です。
ローレンが今後のバチカンにどんな影響を与えるのか、一層、楽しみになりました。

悪魔達の宴

表紙を見ると、ロベルトが悪魔祓いを行うようです。
モノクルは今回はいらないような気がします。

ロベルトと言えば、武器はモノクルと紙と色鉛筆のようなイメージですが、本巻では本来のロベルトの能力は、あまり使わず、サウロの愛弟子としてエクソシストになるようです。

平賀は変わらず、頓珍漢なようで、的を射た行動を取ります。

奇跡調査以外の事情で、たまたま同時期にドイツにやって来た二人が、ドイツで多発している怪事件に足を踏み入れ、その謎を追うことになるんです。

そして、ロベルトと平賀のピンチにマギー神父が登場します。

すっかり存在を忘れていましたが、頼もしい助っ人が加わったことで、漠然とした怪事件たちに切り込む突破口が見つかることとなります。

どっぷりエクソシストかと思いきや、途中からは事件の捜査へと変貌していきます。

特にロベルトは、神父でもエクソシストでもなく、捜査官のような感じの活躍でした。
行動的で相変わらず素敵でした。

平賀はと言えば、ぴょっこり現れたり、気が付くと消えていたりと、本人すら予測不可能な行動力で、一直線に真実へとたどり着きます。

普通の人が思いつかないような思考回路で、思いつかないような発想をし、自分の道を探究しながら、猪突猛進に進んでいくんです。

ある意味、一番頼もしい存在ではありますよね。

あくまで科学者ですから、科学者としての見方をするわけですけど、どこかで普通の人の感覚というものを落としてきてしまったような感じにも見えます。

外見は弱そうですし、守ってあげたくなる雰囲気ですけど、逆ですよね。

平賀はたぶんその図太い神経で、どこへでも行けますし、どこでも生きていかれそうな感じがします。

彼はきっと、生きている限り、自分自身の探究をやめず、ひたすら真実を追及していくんでしょうね。