kei-bookcolorの文庫日和

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『バチカン奇跡調査官』シリーズ13・14 『ソロモンの末裔』『楽園の十字架』藤木稟(著)の感想を書きました!⑦

探偵の休暇

まずは、私個人の話なんですが、、
1年半くらい前に、働きすぎて体調を崩し、半休職した時期がありました。

ケース1
性格の問題なのかもしれませんが、なかなか、仕事を断ることができないタイプのようなんです。

特に助けを求められると、助けなければ!という使命感がわいてしまって、自分の仕事を後回しにして、他人のサポートをしてしまう癖があるんですよね。

さらに、自分がやらねば、自分が、自分が、と思い過ぎていて、周りが求めていないところまでやってしまう。
休みたいのに、休むことへの罪悪感がすごいんです。
結局は休む方が気が休まらなくなります。

ケース2
自分の好きな仕事、得意な仕事は、のめり込みすぎて、長時間残業をして、ひたすらやり続けてしまう性分でもあるんです。
どうしても楽しくなってしまうんですよね。

楽しいと時間を気にしないので、気が付くと夜10時過ぎていたりなんかして、、つまるところ、限界を超えていたことに気が付かなかったんです。

20代30代の頃は、全然大丈夫だったので、その頃の気分で仕事をしていたのも確かなんです。
すでに40後半に入っていたのに、若い頃の気分のままで仕事していた自分が悪かったのだと思います。

そんなこんなで、会社に事情を説明しました。
話してみると、私のオーバー労働について心配している方が結構いたため、すぐに仕事の手配など調整してもらうことができ、すんなりお休みをいただくことができたんです。

巷では「働き方改革」と叫ばれていますが、自分は独り身なので、該当しないものとして、自分には関係のない話のように思っていました。
ですが、私のケースも多少は改革が必要だったのです。

ところで何が言いたいのかと言いますと、ロベルトは、おそらく私と同様のケース1なのかなと思います。
ある日突然、働きすぎていることに気付き、唖然となります。

平賀はケース2だと思われます。
仕事であろうとなかろうと、興味を惹かれるモノがあると、衣食住を忘れてしまうほどに探究し、没頭してしまいます。
なまじっか休みを取らせたら、逆に、新しい探究を始めてしまい兼ねないタイプです。

だから平賀は休みはいらないタイプなんです。
ロベルトは休まないといけないタイプなんですが、平賀と一緒にいる限り、休める日は来ないものと思われます。

そもそも、推理小説において、探偵役の主人公は、いつでもどこでも事件を呼び寄せ、事件に巻き込まれていくのがセオリーです。

明智小五郎だって、ポワロだって、みんなそうなんです。
休んだ時に限って、思わぬ落とし穴が待っている。
休んだ方が、仕事しているより、面倒な事件に巻き込まれる可能性が高いと言ってもいいでしょう。

それでは、休みなどいらない平賀と、休みたいロベルトの冒険を楽しみましょう!

ソロモンの末裔

どうやら、シェバの女王が表紙のようです。
誇り高き気高き女性のように感じます。

毎回毎回思いますが、今回はこれまで以上に、インディージョーンズの世界でした。

そして、毎回毎回、困難でエキセントリックな状況に陥る平賀とロベルトなんですけど、今回はもう最初っから、作者は二人が過酷な試練に遭遇すると予告していました。

よって、これまで以上に大変な事態が待ち受けているということを覚悟のうえで読んだんですけど、想像もつかないほどの苦痛に満ちた試練が二人を待ち受けていました。

相変わらずすごいなと感じるのは、どんなに困難な事態に発展しても、その事態が困難になればなるほど、平賀が生き生きとしてくることです。
そして最後まで、絶対にあきらめない不屈の精神が平賀の中にあり、それが唯一無二の光となって、事態を収拾して行くんです。

どうやら、諦めるという文字は平賀の中にはないように思います。

そしてロベルトにとっての平賀は友人であると同時に、神か仏か、と言ってもいい存在なのではないかと思えてきます。

実際読んでいると、平賀の背後に光明が指しているような感覚に襲われる時があります。
ロベルトもそんな感覚を味わっているのではないでしょうか。

さて本巻では、最初からちょっとした罠に、二人がハマっていたような感覚がありました。
殺人事件に巻き込まれてみたり、砂漠での災難に見舞われてみたり、最後はインディージョーンズ張りの大冒険をしてみたりと、とにかく息つく間もないほどに、濃厚な数日間が二人に襲い掛かりました。

最後のインディージョーンズ張りの冒険では、最終的にどう決着がつくのかが、全く予測できなかったですし、予測できないのはまあいつものことなんですけど、奇跡調査を行うことも全然できてなかったので、いったい奇跡はどう決着がつくのかと、ハラハラもしました。

でも大丈夫、大冒険の終焉とともに、すべての謎が解明されます。
そして、二人が一体どんな罠にはまっていたのかも、本人たちの知らない場所で明らかとなります。

二人が知ってもどうにもならないことなんですけど、二人がまだ何も知らないところで、事件は大きく別の方向へと舵を切りました。

今回のことが今後、バチカンと二人にどんな影響を及ぼしていくのか、ますます楽しみとなりました。

楽園の十字架

豪華客船のオーナー:ルッジェリが表紙のようです。
怪しいことこのうえない青年実業家ですよね。

前作では、たぶん、最初っからのすべてが陰謀だったのではないか?
と思われたので、
今回も最初から陰謀なのではなないか?
と、疑いの目で見てしまいます。

ジュリアが平賀とロベルトをハイチに呼び寄せようとした。
そういう解釈です。

最終的に、それがどこまで合っているのかは判断が難しいのですが、ジュリアが多少、仕掛けをしたことに間違いはないのでしょう。
ただ、絶対、平賀とロベルトがハイチに派遣されるという確信はなかったものと思われます。
派遣調査官に二人が選ばれる可能性が極めて高いという散弾で、画策したのではないでしょうか。

人は誰しも休暇というものが必要です。

ロベルトは基本的に、標準的な感覚の持ち主ですので、休暇を取りたかったはずです。
ですが平賀に休暇は必要ないのでしょうね。

今回の騒動は、正式な依頼があって動いたわけではないため、二人は表向き休暇を過ごしたことになっているかと思います。
なんですが、実際は奇跡調査も行いますし、殺人事件も解決しますし、過激派らしき集団の正体も突き止めますし、ルッジェリの本当の姿にも、薄々気づきます。

気づいたのはロベルトだけかもしれませんが。

最後まで読むと、読者側には、今回のすべての謎が解き明かされました。
二人は、二人の預かり知らない場所で、更なる陰謀に発展していることには、まだ気づいてません。

それにしても毎回面白いのは、空気を読めない平賀の行動です。
小動物のようにちょこまかと動きながら、いつのまにか、事件の核心部分に、突然到達する平賀です。

その空気を読めない行動が、周りの人に不快感を味わわせるんですが、それさえ気づかず猪突猛進に進みます。

でも、時たまに、本当に困っている人の心の痛みに寄り添うことができるという神父らしき一面も見せます。
ロベルトの寄り添い方と平賀の寄り添い方は、どことなく違うんですよね。
うまく説明できないんですが。

奇跡を解き明かすより、読者としては、平賀の神秘を解き明かしたい気もします。