kei-bookcolorの文庫日和

文庫の良さを一緒に味わいましょう!

【贈り物に絵本を】『おなじそらのしたで』をご紹介します!

空を見上げない生活

昔まだ若かった頃、荒川の近くにある会社に勤めていたことがあります。
出勤途中で、荒川の土手にあがって、空を見上げてから、10分くらいぼんやりして、仕事に向かうようにしていました。

大人になると、空を見上げるという、いつでもできることは、後回しになってしまって、結局やらない生活を送るようなります。

子どもの頃のように、大人たちに守られている時代は、未来に不安を感じることもなく、お金の心配をする必要もありません。

難しいことを考える必要もないですし、生活に必要なことに優先順位をつけて、生きているわけでもありません。

未来は想像もできないほどに、遠い存在でした。

その未来がとうとうやってきて、自分が、自分の人生と家族の人生を背負うようになります。

そうすると、どうしても、生産性を生むことや、お金が関わってくることが優先になってしまい、荒川の土手でぼんやり空を見上げるなんていう、一見、役に立ちそうもない行動は、時間の無駄だと切り捨ててしまいがちです。

この絵本の題名を見たときに、若かったころのことや、子供の頃のことをふと思い出しました。

なんであの頃、意味もなくぼんやり空を眺めて過ごしていたんだろう。
毎日見たって、代り映えがあるわけでもないのに。

考えてみても、空を見上げていた理由は思い出せませんでした。

それはたぶん、意味がなかったからなんだと思います。
意味があることをしなければならないという思考がなかったからなんだと思います。

意味のないことをするのが、意味もなく楽しかっただけなのでしょう。
ある程度は無責任に生きられる時代が、私にもあったのだなと思います。

懐かしくもあります。
素敵な時間だったような気もします。
そして、もう戻れない場所に来てしまったことを実感しました。

もう、ただ無邪気に生きることは難しいのかもしれません。
そんな今だからこそ、気持ちだけでも戻ることのできる絵本が、心の中の優しい部分に触れてくれるような感覚があります。

一瞬だけでも、子供に戻れる時間が楽しめる絵本をご紹介します!




おなじそらのしたで

世界のどこから見上げても、誰の元にも平等に、空はあるんです。
世界は繋がっているからです。

そして、みんなのために、世界のために、空は存在します。
誰の目で見ても、空は同じ色だし、どこまでも広く澄み渡っています。

例え、誰も空を見なくなっても、いつでもそこに存在します。

人が空を必要としなくなっても、空があるから地球が守られ、地球が守られているからこそ、大地が守られ、生きとし生けるものが呼吸することができ、人の世界を豊かなものにしてくれています。

ネットで簡単に世界中とつながることができる現代は、便利に、楽に生きてくことができます。
人の生活は、豊かになりました。
ですが、ある意味、不自由な時代にもなってしまったんだと思います。

そんな今だからこそ、自分たちが自然の一部であることを、思い出す時間が必要なのだと思います。
たまには本当の自由を謳歌していた子供のころの自分に戻ってみてください!

作者:ブリッタ テッケントラップ
翻訳:木坂 涼
出版社:ひさかたチャイルド
発売日:2017/12/13
サイズ:28 x 23 x 0.9 cm

表紙から全てのページに、切り抜きの仕掛けがあり、次ページ・次の世界・次の動物へと繋がっていきます。
ですが、めくるごとに新しい世界が広がっているわけではなく、前のページのメッセージをしりとりのように、少しずつ変化させ、つなげていく手法を取っています。