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『後宮の検屍女官』小野はるか(著)シリーズの解説・あらすじ・登場人物等をまとめました!

本ページは『後宮の検屍女官』小野はるか(著)シリーズの解説・あらすじ・登場人物等を紹介しています!

更新日2024年5月22日 5巻まで記載

※事件の真相には触れませんが、登場人物たちの秘密など、ネタバレがかなりありますので、ご注意ください!

シリーズものの小説や漫画は、次の巻が出版されるまでに、数カ月から1年くらいかかる場合が多いかと思います。

漫画であれば、あまり時間がかからないので、ちょっと前の巻を再読してから新刊を読むということも可能でしょう。
ですが、小説となると、ちょっと前の巻を再読するというのも、なかなか難しいものです。

そんな時のバイブルとして、本ページをご利用いただけたら幸いです。

登場人物の名前を忘れてしまったとか、これまでの解決した事件にはどんなものがあったのか思い出したい、とか、自分が一体、何巻まで読み終わっているのか忘れてしまった、などなど。

特に本作『後宮の検屍女官』シリーズは、かなり緻密に作り上げられた作品です。

一見、1冊で完結しているようにも感じますが、毎回、少しずつ問題が残り、次の巻へと何かしら持ち越されます。
もしくは、新たな火種を作って終わる場合もあります。

新刊を読むときに、詳細設定まで思い出すのは、正直なところ、困難に感じます。
よって、本ページは私自身の備忘録として書き残すメモでもあります。

全部を読むというより、皆さんにとって必要な部分の確認としてご利用ください。

※本作は全体的に旧漢字が多く使われています。なるべく本作と同じ漢字を使用しますので、皆さんが本ページを見る環境によっては文字化けしている可能性があります。

姫 桃花(き とうか):本作の主人公
桃の花のように愛らしい顔立ちをしています。
1巻では梅捷妤(ばいしょうよ)という、後宮で一番帝に寵愛されている妃の侍女で、梅捷妤の側近くに仕え、書の代筆などを仕事にしていました。
寝てばかりで、後宮内での出世欲や野心は全くありませんが、検屍となると別人のように覚醒します。
後宮で検屍をする際の桃花の別名は中宮官奴:桃李(とうり)です。
もしくは掖廷検屍官:老猫です。
桃李や老猫のときの桃花は、別人のように凛然として気品と風格があります。
2巻で桃花は、織室という部署に異動します。
5巻では、中宮に異動になりました。

孫 延明(そん えんめい)
皇后に仕える宦官です。
その美貌と、「妖狐の微笑み」で女官たちを魅了します。
1巻では中宮尚書(皇后の文書係)という役職についています。
同時に、皇太子に仕える権利(東宮僕・東宮侍中)も有しています。
2巻以降は、後宮内の要職である掖廷令(掖廷長官)になります。
冤罪で腐刑を受ける前の名前は、孫利伯(りはく)です。
皇太子の友人でもあり部下でもあり、皇太子の母:皇后の部下でもあります。

点青(てんせい)
皇后のお気に入りの宦官。
白晳(はくせき)の肌に大きくて澄んだ青い瞳を持っています。
北方より宮中に献上された異民族です。
大長秋丞(だいちょうしゅうじょう):皇后侍従副長官。
延明と同様に皇后の腹心の部下です。

才里(さいり)
桃花の友人で、噂や色恋話が大好きな侍女です。
父が地方官吏で、母は妾で楽妓(がくぎ)でした。
母ゆずりの楽才で入宮します。
心の奥では、帝の寵を得て出世したいと思っているようです。
1巻では桃花と同じ梅捷妤の侍女です。
2巻以降は桃花について行く感じで異動して行きます。

華允(かいん)
2巻から登場します。
延明の筆記係り兼雑用係りになった少年宦官です。
野犬の仔のような、警戒感にも似た生意気さが顔に残っている少年です。
5巻から掖廷官となり、延明の部下として働きます。

扁若(へんじゃく)
4巻から登場します。
夏陀(かだ)という帝の筆頭侍医である太医令(たいいれい)の弟子でした。
官位は、太医薬丞(たいいやくじょう)です。
つんと取り澄まし、気位が高そうな若い宦官です。
長いまつ毛に縁どられた、すっと切れ上がった目が印象的な人物です。
造作が美しい分、高慢そうな所作がよく似合ってもいます。
検屍官:老猫の協力者でもあり、正体が桃花だということにも気づいています。

13歳で姫家の養女になりました。
生家は代々つづく検屍官の家系でした。
姫家の養女になるまでは、祖父のもとで仕事の手伝いをして、検屍を学んでいました。
祖父は息子(桃花の父)に殺害されます。
桃花の父は祖父を始末して、桃花を、借金返済のために姫家に売り払ったのでした。

郷挙里選(きょうきょりせん)
地方からの推薦で官吏が登用される制度のことです。
後宮に入る女官も同様に、地方各地からの推薦によって登用されます。
後宮の場合は、家柄ではなく容姿や健康、父母への孝徳などが選考基準とされるため、容姿の優れた少女を買取、養女として育て後宮に送り込む豪族や官吏が後を絶ちません。
帝の手がつかなければ、年老いてから宮城を出ることができますが、両親は金子を受け取り親子の縁を切っていますので、帰ってきた娘を受け入れるはずがありません。
また、養父は、養女が金の卵を生むことだけを期待して、後宮に送り込んだわけですから、何もなさなかった養女を受け入れることもありません。
つまり桃花には帰路がないのです。

桃花の夢
後宮から解放されたのちは、適当な検屍官をたらしこみ、妻か妾になって、検屍の現場に入ることでした。
祖父の無念を晴らすために、必ず検屍官になり、祖父が行っていた無冤術(むえんじゅつ:冤罪を無くす術。死者の声を聞き罪なき虜囚を救う検屍術)を継承するためです。
孫延明と出会ったことで、その夢が実現し、変化して行きます。

延明の祖父は、司隷(しれい)という高官すらも独断にて捕縛検挙できる官織に就いていました。
趙中常侍(ちょう ちゅうじょうじ)が、帝にたいして大逆を企てているという情報を突き止めた延明の祖父は、趙中常侍を捕らえようとしました。
ですが、それを察知した趙中常侍に、先手を打たれてしまったのです。
趙中常侍は、重要参考人を殺害し、殺害した罪を祖父になすりつけました。
殺したのは祖父で、口封じしたということは、祖父が大逆を計画した黒幕なのだという筋書きを作り、帝に吹き込んだのでした。
帝は、趙中常侍の言葉を信じました。
結果、延明の祖父と父は、拷問によってむりやり罪を認めさせられることを恐れ、縄につく前に命を絶ちます。
延明の家族は、延明以外の全員が処刑され、延明(20歳)は腐刑(ふけい)を受け宦官となります。
子孫を残せなくなった孫一族は、延明を最後にこの世から絶えることになります。

その後、延明の友である皇太子の主導で、百官が趙中常侍の罪を暴きました。
真実を知った帝が、みずからの手で趙中常侍を裁きました。
そして延明は、冤罪をはらし、身分を回復することができたのでした。

延明の夢
身分が回復されても、切り落とされた体の一部は戻りません。
子孫も残せず、宦官として生きる延明に、生きる意味と使命を与えたのは、桃花という存在でした。
桃花の祖父が行っていた検屍:無冤術を制度化し、冤罪を生まない世の中にするという大きな夢が、今の延明を支えています。

皇后:許氏(きょし)
40歳に差し掛かりながらも衰えぬ美貌の持ち主。
皇太子を産んで以来22年間、帝のお渡りはありません。
このため皇后の地位は、皇太子を擁しながらも不安定な状況が続いています。
点青や延明は娘娘(にゃんにゃん)と呼びます。
中宮(北宮)の正殿:椒房殿(しょうぼうでん)で暮らしています。

皇后の護符
死王の噂が蔓延した際に、後宮で密かに配布した護符。
強い祓除の力があると信じられ、女官の一部から信奉を得ています。
偽造できないように、皇后の簡素な花押がされています。

皇太子:劉盤(りゅうばん)
延明の友人でもあり、上司でもあります。
延明の冤罪を晴らした命の恩人です。
作中では、太子と呼ばれています。
東宮で暮らしています。

皇帝
作中では、帝・大家(たーちゃ)・主上など、様々な呼び方で表現されます。

魚(ぎょ)中常侍
帝の伴伴。
帝が幼いうちからずっと世話役としてついている宦官。
帝にとっては、親子のような、兄弟のような特別な関係。

梅捷妤(ばいしょうよ):梅雪路(せつじ)
帝の寵妃で、(皇后を除いて)後宮最高位の妃嬪です。
皇后を差し置いて、後宮を掌握しています。
20代半ばで、少女のように愛らしい顔立ちをしています。
一区の昭陽殿(しょうようでん)という豪華な殿舎で暮らしています。

梅捷妤の隠された女官
梅捷妤は見目麗しい女官を後宮で見つけると、手元に置き囲い、帝に出会わないように隠してしまうようです。
つまり、梅捷妤の殿舎には、飼い殺しにされている美しい侍女や女官がたくさんおり、桃花や才里もその1人でした。

蒼(そう)皇子
梅捷妤の子で、1巻では9歳でした。
梅捷妤亡きあとは皇后に引き取られ、孺子堂(じゅしどう:本来は皇后の長男が住む堂)で暮らします。

李美人(りびじん)
妊娠中に死亡した妃嬪で、三区に住んでいました。
謀殺され、死王を産んだという噂が流れます。

呂美人(りょびじん):呂恵秋(けいしゅう)
梅捷妤とおなじ一区に住む若い妃嬪。
小柄で幼さの残る顔立ちです。
呂美人自身は帝の寵愛を得ようという意思が薄いようです。
梅捷妤と仲の良い妃嬪です。

張溶華(ちょうようか):張雅媛(がえん)
みやびやかな容貌。
八区:蘭林殿(らんりんでん)に住む妃嬪。
溶華は、美人より一つ上の位です。
入宮は10年前で当時は19歳でした。
多くの女性が15で入宮するなか、遅い輿入れだったため、帝を拝する機会に恵まれなかったようです。

馮充依(ふうじゅうい)
宦官との密通により降格になった、皇帝のかつての寵妃。
捷妤(しょうよ)の位まで登りつめ、昭陽殿に住んでいたこともありましたが、最終的には、帝の住まいから最も遠い14区で暮らすことになります。
帝が太子のときに側室となり、皇子一人を死産、3人の公主をもうけた妃です。

田充依(でんじゅうい):田寧寧(でんねいねい)
皇后の侍女として仕えていましたが、帝に見初められ、帝の子を宿します。
二区の鳳凰殿(ほうおうでん)が住まいになります。

帰蝶公主(きちょうこうしゅ):本名は亀兆公主(きちょうこうしゅ)
3巻では8歳で帝の娘。母親は諸葛充依。
蝶が好きで、帰蝶公主と呼ばれる。

諸葛充依(しょかつじゅうい)
十区:披香殿(ひこうでん)で暮らす妃嬪。
帰蝶公主の母。
もとは八区の張溶華の女官。

関充依(かんじゅうい)
十区で暮らす妃嬪。
白鶴公主の母。
もとは八区の張溶華の女官。

白鶴公主(はっかくこうしゅ)
母親は関充依。

蔡美人(さいびじん)
帝の妃嬪。

虞美人(ぐびじん)
帝の妃嬪。

甘甘(かんかん)
1巻では、後宮で妃嬪や女官をつかさどる掖廷令。
延明が、腐刑を受けた際に、病児という宦官の数々の凌辱から救ってくれた恩人です。
延明を病児のもとから救い出し、手元にかくまい、一人の人間として尊厳を持って接してくれた人物です。
2巻から織室令になります。

宋紅子(そう こうし)
三白眼の女官。
もとは三区で亡くなった李美人の女官でしたが、その後、織室の女官となり、桃花や才里と同房に住みます。
5巻では、田充依の女官になります。

良使(りょうし)
梅捷妤が暮らす殿舎の厨を仕切る三十路を越えた下級女官。
桃花や才里とも仲良しです。

亮(りょう)
30がらみの鋭い目付きで強面の宦官。
桃花を何かと気に掛けます。

公孫(こうそん)
掖廷の丞。中年の宦官。

冰暉(ひょうき)
延明の部下で、桃花との連絡係。

八兆(はっちょう)
掖廷の老検屍官。桃李を気に入っている。

丁(てい)
孫家に長く仕える奴僕。すっかり腰の曲がった家人。延明を坊ちゃんと呼ぶ。

羊角慈(ようかく じ)
桃花の亡くなった祖父。

小少(しょうしょう):後宮門番。

碧林(へきりん):李美人に仕えていた侍女。

高 莉莉(こう りり):李美人に仕えていた侍女。

病児(へいじ):甘甘の補佐。延明が腐刑を受けた際に、蚕室で働いていた宦官。

司馬(しば):呂美人の女官で、姿が凛々しく、ひときわ人気のある女官。

小海(しょうかい):織室の丞(じょう)を務める柔和な雰囲気の宦官。

大海(たいかい):小海が兄と慕う同郷の宦官。閩(びん)という地方の出身。

懿炎(いえん):翳がありしっとりとした雰囲気の宦官。亮の同僚で友人。

金剛(こんごう):首吊り死体として発見された宦官。

如来(にょらい):金剛の死体の第一発見者で、容疑者として若盧獄に収監される。

明明(みんみん):織室の女官。

燕年(えいねん):華允の師父だった人。深い愛情をもって華允を育てていた。

董(とう)氏:河西(かせい)の名士。恰幅がよく、眼光鋭い男性。

媚娘(びじょう):五区の夜警女官。

曹絲葉(そうしよう):梅捷妤の奶婆(うば)。

亞水(あすい):八区の張溶華に仕える下級女官。

薇薇(びび):帰蝶公主の侍女。

浪浪(ろうろう):三区で死体となって見つかった鈎盾署の宦官。

夏陀(かだ):帝の筆頭侍医(じい)である太医令を拝命する人物。

小英(しょうえい):三区でなくなった婢女。45歳。

白苔(はくたい):房で倒れて死んでいた。20代の宦官。

炎晶(えんしょう):梅捷妤(昭陽殿)の新しい女官長。

計春春(けいしゅんしゅん):計雲回の妻。

計雲回(けいうんかい):水望邑で死体で見つかった男。

呂人(ろじん):計雲回に借金をしていた老夫。

顔師氏(がんしし):計雲回が死んでくれた方が都合のよい女性。

蝉女(ぜんじょ):十二区で全裸で見つかった遺体。織室の女官(梅捷妤の元女官)。

王有(おうゆう):浄軍の宦官(梅捷妤の元宦官)。へらへらとした優男。女性の庇護欲をそそるタイプ。

泥巌(でいがん):元は諸葛充依に仕えていた宦官で、延明が浄軍に異動させる。

白卓(はくたい):浄軍の宦官(梅捷妤の元宦官)。

朱章(しゅしょう)浄軍の宦官(梅捷妤の元宦官)。王有の師父。

万寿(まんじゅ):行方不明となっている浄軍の小宦官。

孟濵(もうとく):浄軍の宦官。

貂天(てんてん):浄軍の小宦官。

金英(きんえい):十区の婢女で51歳。

羊角莽(ようかく もう):孫家を陥れる企みに加担した検屍官。

大光帝国(だいこうていこく)
本作が舞台となっている国の名前。

中朝と外朝
政は、中朝と外朝に二元化される。
中朝は禁中に出入りが許された帝の腹心で構成されている。

鈎盾署(こうじゅんしょ)と黄門署(こうもんしょ)
禁中警備をつかさどる部署。
禁中は門を黄門署が管轄し、内部を鈎盾署が管轄する。

羽林(うりん)
帝の護衛。

給事羽林
皇后を護衛する宦官兵。

東朝(とうちょう)
先代の后妃や女官が暮らす場所。
後宮は今上のためのものなので、帝が替われば後宮も総入れ替えとなる。
東朝の頂点は帝の母:皇太后。

路門
内廷と外廷を隔てる門。禁門とも言う。
ただの門ではなく、巨大な建造物で、門番が詰める署、帝の待詔が控える堂、宦官署が置かれている。
路門の建物内までは、帝以外の男性も入れるようです。

内廷と外廷
路門の内が内廷、外が外廷。
内廷は、限られた者しか出入りの許されない帝の生活空間(禁中)となっている。
内廷には、帝が日常政務を行う路寝から、皇后の住まいと、後宮や施設までが含まれる。

燕朝(えんちょう)
内廷の中で、後宮や施設以外の部分。
帝が日常政務を行う路寝、帝が休息をとる燕寝、そして皇后のすまいである後正寝(中宮)の三つのこと。

朝堂
禁中の最も外側にあり、帝が側近とともに政治の重要事項を決定する場所。

詔獄(しょうごく)
帝の命令で高官を捕らえる獄。帝が直接吟味し判決を下す。

玉堂
帝の目にとまった妃妾を宦官が運び入れ、夜伽をさせる建物。
時代とともに使われなくなり、今はただの空き家となっている。

昭陽殿(後宮一区)
正面の門は垂花門(すいかもん)。
皇后の椒房殿に匹敵する規模。
正面が正房(梅捷妤の住まい)。左右にあるのが廂房。
蒼皇子は向かって右手の東廂房で暮らしている。
西廂房は、格の低い妾妃の住まい。

百花苑(ひゃっかえん)
宮城の西にある離宮。

回青園(かいせいえん)
橙や橘の植えられた園林。

御料園
太官が管理する。帝が食する野菜を育てている菜園。

帝から絹を賜る
帝より贈られる長さ五尺の白絹は、自裁せよという命令。

籍田の礼(せきでん)
帝が行う儀礼。みずから田畑を耕し、祭祀用の作物を作ること。

後宮
14の主要殿舎をもとに、14区に区分けされている。

中常侍(ちゅうじょうじ)
秩石千石。帝と寝食を共にする側近宦官。

昭儀(しょうぎ)
後宮の最高級妃嬪の位。現在は空位。

捷妤(しょうよ)
昭儀の次の妃嬪の位。

溶華(ようか)
上から四番目の妃嬪の位。

充依(じゅうい)
側室としては7番目の位。

太医(たいい)
帝のための侍医。

中宮薬長(やくちょう)
後宮の女たちを診察する。
後宮で処方される薬のたぐいも、一括して中宮が管理している。
皇后が掌握する機関。

蠱気(こき)
宮廷で蠱(まじな)い、巫女に祈らせて他者を呪う巫蠱(ふこ)を行うことは固く禁じられている。
巫蠱は偶人を土に入れて呪詛を行う。

偶人(ぐうじん)
呪具。木で人を模ったもので形代(かたしろ)とも言う。

呪いの対処
大光帝国では、病の1つとされ、さまざまな呪いに対応した養生法や薬が存在する。

太ト令(たいぼくれい)
めでたき現象、天災、時節の占と記録をつかさどる官職。

太医令(たいいれい)
帝の筆頭侍医(じい)。勢力争いに関わってはいけない立場。

太医署
内廷に2つ存在する。
本署は少府(しょうふ)という官衙(やくしょ)の中にある。
分署は、独立し、後宮や中宮、帝の燕寝(えいしん)から比較的距離が近い。
太医令が男性だった場合は、本署が使われ、宦官だった場合は、分署を使う。
つまり分署は内廷に入れる立場のものが使うというしくみ。

医官
貴人の病を治せなければ罪であり、失態があれば死を賜ることもある。

薬の持ち込み
後宮への薬の持ちこみは御法度。

印綬
官職ある者はみな腰に印綬を帯びている。
長く垂らされた綬の色や長さで地位の高低がわかる。

〇〇令/〇〇丞
令は長官、丞は副官を表す。
例えば、掖廷令=掖廷長官、掖廷丞=掖廷副官という意味になる。

掖廷(えきてい)
後宮内で妃嬪や女官をつかさどる職。(宦官は入らない)
妃嬪や女官を捕らえるための獄も管轄下にある。
少府の所属なので、皇帝の配下となる部署。
建国初期は後宮だった場所が、現在の掖廷となっている。

暴室(ぼうしつ)
病を得た女官や宮女の隔離施設。
罪を犯した者を収監するための獄でもある。
治療は受けられず、自然治癒するか死を待つだけの牢獄。

拷問
日が没してからの拷問は禁じられている。

宮刑
女官が受ける刑。
男性の場合は腐刑といい性を切り取る処置だが、女性の場合は、木づちを使用する。
腹部をひたすらに打ち、子宮をさがらせて女門をふさぐ刑。

織室(しょくしつ)
染めや織りのための部署。
入宮して間もない女官や、仕える妃嬪を持たない女官が所属する部署。
暴室に収容されている罪人が、染色液をつくる作業を行う。
蚕房(さんぼう)、染房(せんぼう)、織房(しょくぼう)という3区分の仕事に分かれる。
最も多くの女官が従事しているのが織房で、寝起きを共にする5人で1組となり、仕事にあたる仕組み。

宦者署(かんじゃしょ)
宦官を監督する部署。

宦官(かんがん)
「宦」とは神に仕える奴隷という意味を持つ。性を切り取った男性。

験宝(けんぽう)の日
幼い宦官は、切り取った局部が成長とともに生えてくる場合があるため、年に一度の身体検査をする日。

宝(パオ)
腐刑の際に切り取ったもの。皆、壺に入れて大切にしまっておく。
昇進の際や異動の際に検閲される。
冥府の王:閏王(じゅんわん)は子孫繁栄を捨てたものを許さないという言い伝えがあり、宦官は死後、納棺の際にこの宝をもとの位置に戻さなければ、来世は人間にしてもらえないと言われている。
宝は宦官には重要なもので、価値が高く、盗難や転売が後を絶たない。

騾馬(らば)
宦官の蔑称。よく働くので重宝される家畜だが、生殖能力を持たないため、宦官の蔑称となった。

貞と通貞
宦官の種類。
幼い頃施術を受けたものを通貞といい、大人になって施術を受けたものを貞という。
成人後に宦官となった貞は通貞と違い、骨格など外観の男らしさを残しているのが特徴。

蚕室(さんしつ)
腐刑の処置室(性を切り取る室)。

師父
小宦官は、入宮と同時に師父と呼ばれる教育係りがつき、指導を受けることになっているが、その実体は、師父から暴力を受けたり、奴隷のように扱われることが多い。
師父に捨てられると、食料をもらえず、飢えて動けなくなり、宮門を放逐され、野垂れ死ぬ者もいる。

若盧寺(じゃくろじ)
禁中に寺(官署)がある若盧寺は、兵器の蔵所。
管轄下に若盧獄があり、付属施設として蚕室がある。

閩(びん)
閩という地方では、特殊な技術(睾丸だけを破壊)が確立されており、この地方からは性の一部のみを除去した幼い子が献上されてくる。

腰斬刑(ようざんけい)
腰から人体を真っ二つにする酷刑。

宮中での自害は御法度
宮中での自害は、女官・宦官ともに重罪。
親族は奴婢として収容され、本人の死体は塵のように城外に棄てられる。

火事の対処
火災時に行われる対処は、風下の可燃物を撤去する作業のみ。
水をかけて積極的に消火活動を行うことは、通常ではしない。

媵(よう)
正妻が子を生せなかった場合、代わりにその役をになう女性。

官吏や学士の外見選抜
どんなに優秀でも、顔に傷をつくってしまうと、一生出世できない。
名家の子供たちはまず、決して闘殴をしない、顔に傷をつくらないことを教育で叩き込まれる。

度朔山(どさくさん)の虎
桃の木の下で鬼を捕らえ、虎に食わせる神の伝承で、通常は門の魔除けの神として用いられる。


家を継ぎ、先祖をまつり、子々孫々の繁栄を築くこと。
子が親の罪を告発することは孝の観点から禁じられている。

不俱戴天(ふぐたいてん)の仇
父親の仇は同じ天の下に生かしてはおけないという仇討ちを薦める教え。

家廟(かびょう)
先祖代々の位牌をまつる祠堂(しどう)。

先払い
貴人の通行に先駆けて往来に回避、粛清を命じる使者。

髪は切らない
男女ともに髪は切らない。
髪であっても身体を損なってはいけないという決まりがある。

髠(こん)
頭髪を切り、剃り落とす刑罰。

賭博(とばく)
六博(すごろく)のこと。

苣火(きょか)
軍用灯としてよく使われるもの。葦や茅を束ねてつくる松明。

石は武器
砦では羊頭石(ようとうせき)といって、大石を武器として備えている。

トイレの実態
婢女は、下水路に置かれた衝立のかげで用を足す。
それより上の者は、おもに厠を使用する。
厠は、半地下に豚を飼い屎尿をそのまま餌にするものや、下にただ甕を置いただけのものなどある。
後宮妃嬪は、帳に囲まれた専用の「花箱(便器)」で用を足す。

浄軍
後宮の下水処理をする部署。宦官なら誰しも行きたくないと怯える部署。


亡くなった李美人(帝の妃)の棺の再掘が行われました。
棺を開けると、亡くなった李美人が赤子を産んでいました。
亡くなった時、お腹の中には7カ月の赤子がいて、納棺した後に出産したのでした。

第一章 死王 
後宮では、亡くなった李美人が生んだ死皇子が、夜ごと、幽鬼となって這いずり回り、母を謀殺した犯人を探しているという噂がたっていました。
妃嬪も女官も宦官も、皆、噂を信じて脅えていました。

そこで、皇后から後宮の夜警支援を命じられた中宮尚書:孫延明は、たまたま一緒に同行することになった侍女:姫桃花と知り合うことになります。

延明と桃花が、三区の巡回に入った時、宮女たちが暮らす舎房から悲鳴が聞こえました。
急いで駆けつけてみると、碧林という宮女が臥牀(ねどこ)で亡くなっていました。

桃花と話をするうちに、桃花には検屍の知識があり、検屍で得た情報と、するどい観察眼で、事件の真相を見抜く能力があると、延明は気付きます。

第二章 冤罪のなる木
延明は、掖廷令の甘甘が、殺人の疑いで捕らわれていることを知ります。
甘甘の補佐:病児が殺害され、その犯人が甘甘だというのです。
甘甘本人は無実を訴えています。
延明には、恩人である甘甘を見捨てることはできないのでした。

そこで桃花に、知恵を貸して欲しいと頼みます。
延明は深く深く、桃花に頭を下げました。

桃花は、慈母のような表情で、協力を約束します。
そして、官奴の姿で桃李と名乗り、掖廷獄にて検屍を行います。

第三章 猫の声
一区で起きている奇妙な話を、夜警女官が延明の部下へ報告してきました。
夜になると盛りのついたオス猫の泣き声が聞こえてくると言います。
しかもその泣き声は、赤子の泣き声にそっくりだと言うのです。
先の死王騒動の件もあったので、関連づけて、女官たちが怯えているようです。
延明は夜警の人数を増やし、猫の住処を確認するところから始めました。

桃花は第二章から、発熱と発疹、伝染病の疑いで、暴室へと送られ隔離措置となっていました。
梅捷妤の殿舎にいては、掖廷での検屍ができないため、やむを得ず取った措置でした。

暴室にいる罪人たちはしばしば、織室(染めや織物のための部署)の過酷な労働で使役されるという罰を受けるのですが、運悪く、桃花もこの労働に駆り出されてしまいました。
ですが、この織室で紅子という女官と出会います。
紅子は、もとは亡き李美人の女官で、三区にいたと言います。
桃花は、思いがけず三区の情報を仕入れることができたのでした。

そんな中、三区でまた女官の死体が発見されました。

第四章 罪
延明は皇后に呼ばれ椒房殿に赴きます。
掖廷令:甘甘の姿もありました。
掖廷は少府の所属で、皇帝の配下となるため、珍しい組み合わせです。

帝は、女官殺害の件を尚早に解決するようにと命を下しました。
後宮の監督者である皇后も、捜査協力をすることになります。
そこで皇后は、延明を掖廷に出向させ、捜査を命じます。

桃花は、暴室から梅捷妤の殿舎に戻ってきましたが、今度は才里が、梅捷妤の不興をかい、70回の笞刑(ちけい)を受け、暴室送りになってしまったのです。

桃花は才里を救うために延明に連絡を取ろうとしますが、桃花から延明に連絡をとる手段がありませんでした。
そこで桃花は、わざと、掖廷に捕まることにしたのです。

運よく掖廷に出向中の延明に出会えた桃花は、延明の捜査に協力することになります。

第一章 掻き傷
延明は宦官ではなく、外廷にて、大夫として太子に仕えるようになり1月半が経っていました。
ある夜、"内廷にて失火"の急報がもたらされました。
出火もとは掖廷獄で、中宮の一部まで飛び火したと言います。
掖廷獄にいた「死王」一連事件の犯人と、暴室にいた関係者が、全員焼死してしまいました。
さらに、出火もとが掖廷獄だったせいで、掖廷令の甘甘は責任を取らされ投獄されてしまいます。

延明は掖廷令として後宮に戻り、完全鎮火と、火災の調査と、、甘甘から託された冤罪事件捜査の指揮をとることになりました。
そして直接捜査に向かう途中で、華允という見知らぬ少年宦官に出会うことになります。

桃花と才里は暴室を出て、織室女官に異動になっていました。
もと三区の女官:紅子と3人で、一緒に仕事をし、同じ房に住むことになりました。

第二章 玉堂
新たに織室令に就任した甘甘の指示で、桃花は後宮全域に、機を織るための絹糸を配る仕事を行っていました。

桃花が十四区にやってくると、行方不明の妃嬪:馮充依と、宦官:大海が亡くなったという叫び声がしました。
掖廷獄から始まった火災の飛び火で、鎮火が遅れていた玉堂という建物から遺体が見つかったのです。
どうやら2人は心中したらしいのです。

馮充依が大海を殺した無理心中か、大海が馮充依を殺した無理心中か、噂が錯そうする事態となりました。
延明は勢力争いの影響に巻き込まれ、事件の真相を捜査することになります。

第三章 愛のため
火災に関する調査は難航し、出火原因は不明のままでした。
少しでも新たな情報を仕入れようと、延明は自ら調査に向かいました。
そんな時、延明は、杖刑を終え解放された小海に出会います。
そして小海から、玉堂で大海を発見した際の遺体の状況を聞くことになります。

翌日、小海が自ら命を絶ったという報告を受けます。
大海への謝罪が書かれている遺書も見つかりました。
ですが、延明はある矛盾について気づいたのです。


夜警女官2人と中宮の宦官(延明と点青の部下)が、夜警中に、無人のはずの三区で老女の死体を発見します。

第一章 親心
三区で見つかった死体は梅捷妤の奶婆(うば)でした。
帝の側近宦官である中常侍が、発見から一時(2時間)しかたっていないというのに、死体報告書を掖廷に提出しました。
それは、梅捷妤の奶婆が三区の櫓から身を投げた自害であるという報告書でした。
つまり捜査を行わず、この件を終わらせるようにという梅氏側の圧力がかかったのです。
検屍をしようとする掖廷と、遺体を回収しようとする梅氏派で対立することになりました。
皇后の機転と協力を得て、延明は何とか遺体と現場を死守し、桃李を呼ぶことになります。

第二章 蝶々
延明の元に、十区で暮らす帰蝶公主が行方知れずとの報せが入ります。
蝶が好きな帝の娘(8歳)です。
その朝、散策にでかけ、殿舎に戻ってきた際に、お付の侍女のすきをついて逃げ出し、行方不明になっていると言います。
帰蝶公主が逃げ出し、お隠れになるのは、これが2度目だと言います。

延明は、8歳の少女の身を案じ、今動かせる員吏をすべて投入し、後宮の捜索にあたろうとしますが、母親である諸葛充依に断られ、同じく十区に住む関充依に迷惑がられ、捜索が思うように進みません。

そんな時、延明は華允から帰蝶公主が酷遇されていた現状を聞くことになります。
帰蝶公主を見つけるため、逃げ出すに至った十区の事実関係を調査するため、延明は桃花に話を聞きに行きます。

第三章 偽り
三区の井戸から下級宦官の死体が見つかりました。
桃李が検屍を行います。
どうやら近くの倉で何者かと争い、そのあと井戸に落ち、溺死したようです。

延明は身元の割り出しを急ぎますが、後宮内にはゆくえ不明の宦官がおらず、時間がかかっていました。

内廷全域に捜査対象を広げ、莫大な名簿と所在を確認し、禁中警備をつかさどる鈎盾署(こうじゅんしょ)の宦官:浪浪(ろうろう)の遺体であることが判明します。

通常、後宮内部に鈎盾署の者が来ることはありません。
何しに後宮へ来たのか、なぜ三区で死んでいたのか。

桃花の推理で、事件の真相にはたどり着きますが、より大きな謎が隠されたまま、本巻は幕を閉じます。


梅捷妤を巫蠱(ふこ)で絶命させたとして、点青と延明は投獄されていました。

第一章 巫蠱の禍
少し時間がさかのぼります。
今朝の朝議にて「後宮に蠱気の疑いあり」との上奏があったと、太子からの密書が延明に届きました。
帝は、上奏した太ト令(たいぼくれい)に、中宮と後宮に、巫蠱の痕跡がないか調べるように命じたと言います。
延明と公孫は警戒しつつ、通常業務に戻ります。

そんな時、延明の元に太医令の夏陀が、弟子の扁若を伴って訪ねてきました。
延明は「検屍教本」を制作するため、様々な病死の詳細を知りたいと考え、夏陀に相談していたのでした。

そして、延明と夏陀と扁若が話をしていると、、
「後宮三区で巫蠱の形跡発見」の急報が届いたのでした。

第二章 毒と仙薬
帝は、巫蠱で絶命したとされる梅捷妤の遺体を、太医署に任せ、氷蔵して管理するよう命じました。
夏陀は帝より、梅捷妤の遺体を調べ直すように命じられます。
帝は梅捷妤が毒殺された疑いがあると考えたのでした。

一方、投獄された延明と点青は、厳しい拷問を受けていましたが、延明の元には、老猫、小間使いの童子、華允が連日面会に現れました。
延明がこれまで桃花とともに解決した事件の関係者が、延明のために動き、食事や着替えが差し入れできるように協力してくれたのでした。

第三章 動かしがたいもの
どうにか太医署の扁若を味方につけた老猫は、梅捷妤の検屍を八兆とともに行います。
本当の死因は、誰も予測できなかった驚くべきものでした。

その直後でした。
夏陀が亡くなったという急報が届きます。
獄中に差し入れを持ってやってきた夏陀を、延明が殺害し、自らも命を絶ったという報せでした。
老猫と扁若は、急いで延明と夏陀の元へ向かいます。


何とか一命を取り留めた延明は、華允と事件の答え合わせをします。
そして、桃花に逢いに行くのでした。

感想
本巻は、これまで先送りされてきたいくつかの謎に対して、答えがある程度出揃う巻でもありました。
1巻から始まった一連の事件に、一旦は決着がついたとみてもよいでしょう。

これまでは、、
後宮での威光が陰ったとは言え、名目上は最高位の皇后が君臨していました。
帝の嫡子で、皇后の息子で、延明の上司で友人でもある太子も後ろ盾として存在していました。
そして現場の指揮官は常に延明でした。
だからどんな事件も陰謀も、解決できていたと言っても過言ではないでしょう。

ですが、本巻では、皇后も太子も動きを封じられ、延明は暗殺されそうになり、瀕死の状態に陥ります。
この絶体絶命のピンチに、残された力なき者たちが、必死になって延明を助けようと動きます。

事件解決の鍵は、「信じる心」だったように思います。
延明は拷問が辛く、途中、疑心暗鬼になりましたが、最終的には信じると誓ったのです。
そして延明が信じる道を桃花も信じました。
それが事件を解決へと導くことに繋がって行ったのだと思います。

第一章 凶器の名
梅捷妤死亡に関連する一連の事件で、投獄され、毒殺されかけた延明は、一時は瀕死の状態にまで陥りました。
一命を取り留め、職務復帰できるまでに回復しましたが、体調を崩すたびに無理やり休暇を取らされていました。
そんな折、帰郷し家廟(かびょう)参りをするようにと、帝からのお言葉を賜り、延明はまとまった休暇を取って、生家に戻ることになりました。

孫家が冤罪に陥れられ、一族すべてが葬られて以来、1度も帰っていない邸に、延明はしぶしぶ帰ることになりました。

ひと月の休暇が終わり、延明が京師(みやこ)に戻る日がきました。
太子がフラッと延明を迎えに現れます。
おそらく太子にとっては、自由に旅をすることができる最後の機会です。
延明は友として太子のお供をすることになりました。

そして、太子とともに立ち寄った邑で、宮廷外で行われる検屍を目にする機会が訪れました。
延明はこれまで桃花から学んだ知識と、自分が身に着けてきた知識を活用して、殺人事件の推理を行います。

第二章 全裸の女
十二区で全裸の女性の死体が発見されました。
ほとんど人の行き来がない植え込みの陰でした。
身元は不明、強度に全身が硬直し、四肢を投げ出して仰臥の状態でした。
外傷は見られません。衣服も見つかっていません。

延明の復帰1日目に、不審死が発見されたのでした。
体つきから婢女ではなく、女官かと思われます。

華允はこれまで延明の筆記係でしたが、秋に正式な掖廷官となりました。
延明は華允に変死体の調査を任せます。
八兆と十二区へ行き、死体と周辺の詳細を調べるように指示しました。
華允を担当官に指名したのです。

ですが華允と八兆は、調査から戻り、延明に判定不能の遺体であると報告しました。

やがて身元が判明します。
判定不能の女性は、もと梅捷妤の隠された侍女:蝉女で、今は織室に移動した女官でした。

たまたま居合わせた扁若の提案で、延明は老猫を呼ぶことにしました。

第三章 検屍可能
婢女の死体を宦者署が発見しました。
浄軍で行方不明の小宦官が、すでに死んでいる可能性があると推察した宦者署が、下水処理の水場をさらったところ、死体が発見されたのでした。
ですが、その遺体がどうやら女性のようなので引き取りに来て欲しいと、掖廷に報せが入ります。

現場には、すぐ検屍官を向かわせます。
同時に、掖廷在籍官吏50名を投入して、後宮内の名籍簿の再確認を行い、婢女が1名行方不明となっていることを突き止めます。
十区の婢女:金英、51歳です。

ここのところ、浄軍がらみの事件が続きます。
延明は妙な因果を感じました。

そして、検屍と死体回収に向かった八兆と華允が戻ってきました。
八兆は、腐乱死体で検屍不能と判断しました。

延明は掖廷官に、鋤をもって浄軍についてくるようにと命令します。
浄軍で遺留物を捜索する必要があると考えたのでした。