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『後宮の烏』白川紺子(著)の感想を書きました!①

後宮ブーム

ある時ふと気が付くと、ライト系やラノベ界では、後宮ブームが到来していました。
その火付けになった作品の一つが、本作『後宮の烏』ではないかと思われます。

ちなみに『紅霞後宮物語』や『薬屋のひとりごと』も、後宮ブームの主流を作った作品と言えるのではないかと個人的には思います。

後宮と言えば、大奥のように、女性たちが皇帝の寵愛をめぐって争い合う、恐ろしい場所というイメージが付き物です。

皇帝は素敵な男性で、妃たちはみな皇帝を愛していて、皇帝から愛されたいと願い、他の妃に嫉妬し、嫌がらせをしたり、呪詛をしたり、事件を起こして濡れ衣を着せたりと、とにかく他の女性を追い落として、自分が1番になろうとします。

ですが、そんな女性は当然、皇帝から愛されることはありません。
後宮にて不遇な扱いを受ける女性を皇帝は見初める、そういったシンデレラストーリーが、昔からの定番であり、主流でもあったように思います。
(源氏物語で言うところの桐壺帝と桐壺更衣のラブロマンス)

そういった固定概念を覆してブームを引き起こしたのが、『後宮の烏』や『紅霞後宮物語』や『薬屋のひとりごと』ではないかと思います。


例えば、皇帝がイケメンというわけではないとか、皇帝はイケメンだけど皇帝に興味のない妃が登場するとか、皇帝以外の男性を愛している妃が登場するとか、後宮が舞台だけど皇帝とは無関係の世界が語られるお話だとか、、

日本にもともとあった主流の後宮ラブロマンスを崩壊させてから、新しい主流を作り出し、世間に新しい路線を浸透させ、後宮ブームを巻き起こすことに成功した。

そういう捉え方ができるのではないかと思います。

「後宮」という文字が使われている作品を何か読んでみたいと思う方はぜび、これからご紹介する『後宮の烏』にトライしてみてください。

皇帝にも、他の男性にも、誰にも寄りかからず生きる、芯の強い女性がヒロインです。

自分に架せられた運命や使命を受け入れ、その後、それらすべてを自分の力で乗り越え、道を切り開き、強くたくましく生きていく。

可愛くもありカッコよくもあるヒロインが登場します。

そして、どんなに強い敵が現れようとも、怯まず、臆さず、自らの能力で倒します。
あの小さい姿で、どこにそんなパワーがあるのかと、不思議に思うほどに、とにかく最強に強いヒロインなんです。

そして、男性からも女性からも愛されるヒロインでもあります。

とにかく、これまでの後宮のイメージや、皇帝のイメージや、妃のイメージが大きく変更されることは間違いありません。

ぜひご自身で心感されることをお勧めします。

後宮の烏

初めて本作を手に取った時、表紙の儚げな女性を見て思いました。
なぜ、憂いを帯びた表情をしているのだろうか?
一体、どんな事情があるのだろうか?
どうして後宮にいるのか、衣装が何故黒いのかと。

ヒロインの寿雪は、「烏妃」という妃として、後宮の奥深く、夜明宮という殿に1人で侘しく暮らす美少女です。

夜伽をしない妃で、誰とも交流を持たない、ただ一人で生きていくことを義務づけられた妃でもあります。

前王朝の王家の血を引く身でもあり、存在が謎でしかない烏妃でもあるため、色んな意味において、複雑な事情が隠されているように思います。

ですが、その事情は、本巻の最終話であらかた語られており、皇帝もその事実を知ることとなります。

こんなに早くも暴露してしまって良かったのか?とも思ったんですが、逆に知ってしまったということが、皇帝と烏妃の間に、大きな溝を作ることにもなるのかもしれません。

そういった意味では、今後の展開で、二人が愛し合うための大きな障害となってしまったようにも思います。

皇帝:高峻は、美しい母から生まれた、美しい青年です。
皇帝であるがために、表情を隠して生きているように思いました。

最後まで無表情で生きていくのか、寿雪の前で笑顔を見せるのか、そこらへんの変化も楽しみです。

物語は、烏妃の不思議な術で、毎回、事件の真相を探り、解決していくということがコンセプトのようですが、事件も危険なものから、そうでないものまで、幅広く展開していくようです。

烏妃と皇帝は国を守らなければならないし、二人が幸せになる道も見つけないといけないのだと思います。

様々な事件を解決する中で、二人が幸せになる未来を見つけ、その手につかんでほしいと願っています。

アニメもおすすめです!

本作は2022年にアニメ化されました。
アニメ化を記念して、当時は、文庫の表紙に、アニメ化されたキャラクターたちが描かれているカバーがかかっていたんです。

そのカバーがどうしても欲しくて、再度、買い直してしまいました。
そのくらいアニメのキャラクターが美しく、素敵に描かれていたということです。

通常は、原作を読んでからアニメやコミックを見ることをお勧めするのですが、本作の場合は、アニメから入るのも有かなとも思います。

オープニングもエンディングも素敵なんです。
アニメのコンセプトにマッチした曲でしたし、映像も素敵でした。

オープニングテーマは、おそらく、物語全体のコンセプトや世界観を歌っているのだと思います。
烏妃がどんな存在で、どんな役回りをするのか、映像も含めて暗示しているような感じがしました。
そしてそれはもう、寿雪のあずかり知らない場所から時間から、すでに始まっていたため、どうすることもできず、受け入れるしかない。

そんな宿命をはっきりと認識できるような、勢いのあるメロディでした。

エンディングテーマは、オープニングとは逆で、寿雪の心の中にある叫びが、静かに淡々と歌われているような感じでした。

高峻という存在を知ってしまったがために、我が身を見て、我が身に降りかかった宿命を憂い始めてしまった。
高峻が望むなら、友としてでもいい、隣に一緒に立ちたい。
そう願ってしまう自分に罪悪感を感じながらも、そうしたいと願ってしまう。
そんなどうしょうもないジレンマのようなものを感じました。

エンディングの最後では、寿雪を愛する者たちが勢ぞろいして、花見を楽しむシーンが描かれています。

寿雪が望むささやかな幸せが、夢のように儚く消えてしまいそうで、より一層、切なく辛くなるエンディングテーマです。

映像も美しく、原作を読んだ後でも、読む前でも楽しめると思いますので、アニメもぜひ試されることをおすすめします!