定番の兄妹
毎回書いているのですが、、
白川先生の作品には、ほとんどの作品で兄が登場するのが定番なんです。
本作でも、これまでとは趣の違った兄が登場します。
ここまで本作を読んだ方であれば、誰が誰の兄なのか、すでにお分かりでしょう。
今のところ、妹はまだ兄がいる事実を知りません。
兄だけが知っている秘密です。
だから、兄の行動は一見、挙動不審にも見えます。
兄は、自分がおかしな行動を取っているということに、気づき始めてはいますが、体が勝手に動いてしまうようで、自分でも止められず、予期せぬ行動となっているようです。
妹も驚いていますが、兄本人は、もっと驚いているんです。
その兄妹のリアクションを楽しみながら読んで行きましょう。
後宮の烏4
寿雪が刀を持っています。
てっきり、巫術で戦うだけかと思っていたんですが、刀を振るうこともあるようです。
後方に控えている二人は、おそらく、白雷と白雷が連れている女の子なのでしょう。
本巻は、読めば読むほどに、危険な匂いがプンプンと漂ってきます。
何が起こってどう決着するのか、最後までハラハラする展開が続きます。
そして寿雪は、やっぱり強いんです。
色んな意味で。
だからでしょうか。
寿雪を危険視して、嫌う人間は嫌うんです。
寿雪の優しさにひかれて、好きになる人はものすごく好きになるんですが。。
大好きになるのか、大嫌いになるのかの両極端な感じです。
1人を覗いては。
衛青だけは、嫌いだけど好きみたいな、不思議な感じになってしまったようです。
表紙で暗示があったのですが、白雷と、直接対峙がありました。
ずっと遠くにいる気がしていましたが、案外、すぐに会えるものなんですね。
後宮というある意味守られた場所にいるので、そうそう外の人間、特に男性には会えないものと思っていましたが、結構簡単に会えてしまうものなのですね。
案全な場所などないということでしょうか。
油断大敵です。
鶴妃と鶴妃の父親が、今後も、寿雪にとっては、災いの種となるように思います。
ですが、烏妃の謎や縛りを説き、解放するカギを同時に握ってもいます。
戦いながら、譲歩していき、皆が幸せになれる未来を見つけないといけません。
思えば皆、つらい過去を引きづって、つらくても生きながらえなければならない人たちばかりが、登場します。
それぞれがそれぞれなりに、報われる日が来るんでしょうか。
本人の意志に反して、起きてしまったことは変えられません。
ですが、今から起こることは、自分で選べるはずなんです。
寿雪が、皆を幸せにできる未来を選べるようにと、願うのみです。
後宮の烏5
心なしか、寿雪が、切ない顔をこちらに向けているように感じる表紙です。
何かを静かに決意して、嵐が来る前に、羽を休めておこうとしているかのような感じがします。
本巻を読み終えて、改めてこの表紙を眺めてみると、なんとも言えない気分になります。
初めから何となく思っていましたが、、
これまで寿雪が出会ってきた人々は、味方になった人も敵であった人も、皆全員、この未来を迎えるために、必要不可欠な人員だったのではないかと思うのです。
全員、少しずつ、密接に関連しており、偶然出会ったわけではなく、偶然事件が起こったわけでもなく、すべては必然であって、まさに今一つの輪となってつながろうとしているのです。
事件も幽鬼も人も皆、寿雪のために寿雪のもとへ集まってきた結果が、とうとう本巻に現れたんだと思いました。
寿雪を助けたかっただけなのに、そのために選んできたそれぞれの選択が、集まって、思わぬ方向へと舵を切り出しました。
選択しているのも行動しているのも、寿雪とその仲間たちだけであれば、良かったのに、寿雪の思惑外で動く者たちという不確定要素が、思わぬ形で登場してきます。
思わぬ事態へと発展して、収束をして本巻は幕を引きますが、これが最悪の自体なのか、むしろこれで未来が開けたのか、まだ何も想像できない状態になってしまいました。
途中途中で、フラグがたっていたので、嫌な予感しかしなかったんですが、それはある意味当たっていたのだと思います。
そしてこの衝撃的な事態を打開できる要素があるとしたら、それは、衛青なのではないかと思うんです。
高峻の近くにいる兄妹に何かが起こるということは明白です。
それはどう考えても寿雪と衛青のことでしょう。
衛青がどう動くのか、次巻以降が、とても楽しみです。
後宮の烏6
水に浮かぶ寿雪が表紙です。
美しい女神のようです。
何もかもから解放され、穏やかな顔をしているようにも見えますし、、何かを求めようとしているようにも見えます。
前巻の衝撃的なラストをうけ、寿雪が、いったいどうなってしまったのかと、気が気ではありませんでした。
前巻の高峻の最後の悟りから、絶望的な事態なのではないのかと、思わずにはいられません。
ですが大丈夫です。
高峻も、寿雪の周りにいる人々も皆、すぐに立て直しにかかります。
動きも迅速でしたし、絶望もしていませんでした。
むしろあのラストを受けて、皆が、寿雪のために何をすべきかを見直し、よりスムーズに動けるようになったようにも思いました。
起こってしまった最悪を、転機に、物語は大きく動き始めたんです。
一気に、すべての事実が白日の下にさらされようとしています。
向かう先は皆、同じです。
不確定要素の動きが、どんな事態を招き、寿雪にとってそれが、良いことなのか悪い結果を生むのか。
それぞれがそれぞれの選択をして、それぞれの望む未来へ向かって、大きく舵を切りました。
寿雪は、後宮という籠の中の鳥です。
だから高峻は、籠から解き放ちたいと考えたわけですが、私からすると高峻も皇帝という籠に囚われる鳥です。
思えば宮女も宦官も、同様に籠の中の鳥のような気がします。
籠の中の鳥たちを後宮に置き去りにして、寿雪が飛び立つことが果たして、寿雪にとっての幸せにつながるのか、それが最後の選択になるのではないでしょうか。
後宮の烏7
何かを感じるように、両手を広げて立つ寿雪が表紙です。
もう妃には見えません。
巫女もしくは戦士のようにも見えます。
後ろに広がる海も空も、暖かさを感じますし、寿雪をやさしく受け入れてくれるようにも感じます。
空に描かれている雲が、天使の羽のようで美しいです。
とうとうすべてが終わる日が来ました。
最後の本巻では、高峻があまり登場しません。
ですが、仕方ありません。
高峻は、自分は籠の中にとどまることを選び、寿雪を飛び立たせたのですから。
高峻は、いつか、籠から出れる日が来ると信じて待つしかありません。
最後の本巻は、寿雪の預かり知らぬところで起こった、不確定要素の動向が、物語の半分を占めていました。
つまり、寿雪も、出番が少なめだったということです。
そして、迷う時間もないほどに、すがすがしく、自分の行く末を決める寿雪がいました。
最後まで、とてもカッコいい女性でした。
終わりは唐突に訪れます。
ですがそれは始まりでもあるんです。
やっと寿雪は、自分の人生を選んで生きていけるんですから。
前巻ぐらいになってから、はたと気づきました。
これは兄妹の話なんだなと。
烏と梟、寿雪と衛青、朝陽とその妹、之季とその妹、晩霞とその兄たち、様々な兄妹の絆がありました。
それぞれが傷つきました。
でもいくつかは幸せを得ました。
高峻と寿雪は、自分たちだけでなく、自分たちに関わったすべてのものたちを、呪縛から解放することになったようにも思います。
それにしても烏は強かったのです。
何が起こっているのかは見えませんでしたが、圧勝だったのではないかなと思うんです。
無敵の強さです。
烏と梟が、その後どこに行ったのかはわかりませんが、離れることなく永久に一緒に過ごすのでしょう。
寿雪と高峻は、もしかすると魂の片割れだったのかもしれませんよね。
どんなに離れてもつながっている。
恋とか愛とかいうもの以上の何かで結ばれているという感じなのでしょうか。
体を触れ合わせる日は永遠に来なくても、互いに思い続ける唯一の存在だったのでしょう。