ドラマから入りました
原作が小説であるドラマや漫画は、なるたけ、原作を読んでから見るようにするのがポリシーなんですが、やはり、ドラマと漫画のほうが手っ取り早く楽しめてしまうという魅力もありますので、誘惑に負けて、先に映像や絵を見てしまうというパターンも往々にしてあります。
本作は、伊野尾慧くん主演のドラマを先に見てから、なにこれ面白い!と思ってしまって、原作を買いに本屋に向かいました。
当時はまだ伊野尾慧くんが「めざましテレビ」に出演されていて、「めざまし8」の永島優美アナウンサーと、番組が切り替わるタイミングで会話されていた時に、伊野尾くんが永島アナにドラマを見てくれてますか?というようなことを聞いたんです。
ところが、まだ見ていないけど撮ってあるからこれから見るというような感じの永島アナの返事が返ってきて、スタジオ中も視聴者も「ええ!」という雰囲気になり、かなりアタフタしながら「めざましテレビ」が終わってしまった。
という衝撃映像をたまたま目にしたんです。
(一瞬の出来事で、録画したわけではないので、2人の会話の具体的なセリフは少し違っているかもしれません)
二人のやり取りが、面白すぎて、というか永島アナの天然ぶりが、天才的過ぎて、ドラマにものすごく興味をもってしまったんです。
永島アナ+伊野尾くんのコンビ、大好きでした。
伊野尾慧くんが高槻彰良准教授役なんですが、個人的な印象としては、かなりキャラが合っているように思います。
うまく表現できないんですが、伊野尾くんの「アハッ」ていう感じが、ちょうど良い塩梅なんですよね。
残念なのが、原作と比べると身長が10センチくらい足りないところですかね。
本作の主役は、題名がついてますので、高槻彰良准教授なのでしょう。
ですが、物語の語り部は、大学一年生の深町尚哉です。
物語は尚哉目線で語られるため、読んでいる側としては、尚哉が主役のように感じてしまいます。
その尚哉役は、神宮寺勇太くんでした。
尚哉は大学デビューできなかった、地味メガネくんなんですが、神宮寺くんも、ピッタリのキャラを演じられていたように思います。
本作においては、ぜひ、小説もドラマも、どちらも試してみることを強くお勧めします!
孤独な主人公
本作の語り部である尚哉は、10歳の夏休み、ある奇妙な体験をしました。
それは現実にはあり得ない世界(異世界)に迷い込むというものでした。
そのせいで、尚哉の耳は、人の嘘を声の歪みとして知覚してしまうという特殊な能力を持つことになってしまったのです。
そして、この嘘を聞き分ける能力は、尚哉を「孤独」にするために備わった能力でもありました。
人は呼吸をするように嘘をつきます。
32ページに書かれている尚哉の心の声によると、
この世は嘘つきだらけで、歪み軋んだ声で満ちている
ということになるようです。
嘘で歪んだ声をただ聞くだけだったら、尚哉はここまで「孤独」にはならなかったでしょうし、この能力を利用することができれば、それこそ、犯罪だってなんだってできたはずです。
ですが、歪んだ声は尚哉を不快にさて、気分を悪くさせるものでした。
嘘をつかれたことで心にダメージを負い、体にも変調をきたしてしまうのです。
彰良と一緒の調査中に、倒れる場面もありました。
嘘を聞きたくない尚哉は、やがで、耳の中で別の音を鳴らしておけばいいのだということに気付きます。
耳にイヤホンをして、音楽で外の音を打ち消すようになりました。
さらに、自分がこれ以上傷つかないようにするために、学校でも家のなかでも、目には見えない、絶対的な線を引くことにしました。
そして、この先立ち入るべからずと、自分自身に戒めたのです。
線を踏み越えて相手の手を取ってはいけない。
「孤独」でいることこそが、尚哉を守る唯一の方法となってしまったのです。
「孤独」という言葉はまるで「呪い」のようにも感じました。
"お前は孤独になる"
あの夏の夜、言われたその言葉に、自ら支配されてしまったようにも思えます。
現実の世界にいるのに、まるで、尚哉だけが別の次元にいるようにも感じます。
本作は、孤独を自ら選んで生きてきた尚哉が大学生になるところから始まります。
あの夏の日からこれまで、死んだように身を隠すように生きてきた尚哉に、再び生命の息吹を吹き込んだのが、彰良でした。
二人の出会いは偶然のようでいて必然でもあります。
二人はある意味においては、同様の「孤独」を持ち、辛い人生を歩んできました。
ですが、傷を舐めあうために出会ったわけではありません。
助け合って、支え合って、すべてを乗り越えるために、出会ったのだと思います。
いずれ2人の真実が明らかとなる日が来るのだと思います。
それまでに2人がどんな風に成長するのか、また、明らかとなった後の2人の人生がどうなってしまうのか、まだまだ先は長いのですが、ものすごく楽しみです。
民俗学かく語りき
第1章 いないはずの隣人
人が嘘をつく時というのは、必ず何かしらの理由があります。
そして、たいていの場合は、何かしらのメリットが存在するものです。
自分にとってのメリットにしろ、自分の大切な誰かのためのメリットにしろ。
嘘をつくというリスクを負ってでも得たいメリットが。
本話では、一見、自分の不利益にしかならないような嘘をつく人間が登場します。
無意味にしか見えないような嘘、会話の一部が嘘なのではなく、会話のほとんど全部が嘘。
つまり、あらかじめ嘘の物語を作っていたということになるのだと思います。
尚哉は、嘘は見抜けても、その先にある真実にはたどり着けないようです。
ですが、彰良は違います。
一般常識に欠ける彰良ですが、人が考えて行動した結果に起こった真実については、だいたい見抜けるようです。
途中までは残念なイケメンの彰良でしたが、最後は、きっちり解決します。
第2章 針を吐く娘
本話では、女子2人の複雑な友情を見ていて、、少し寒気を覚えました。
特に最後の方は、尚哉が感じる不快感を一緒に味わうことになります。
嘘の上に成り立つ友情。
でも、それは、ずっと続けていくことで、嘘がいつしか真実となり、友情には違いのない感情も生まれるのかもしれません。
私もいちお女子なので、気持ちはわかるような気もします。。
嘘をつく人間に対して、容赦なく接する彰良と、でも最後にはやっぱり優しくなる彰良の二面性も見ることができました。
第3章 神隠しの家
本話でも、女子の友情が語られていました。
こちらは、少しお節介のような友情ですが、本当に心が存在する友情だと思います。
少し、救われた気分に戻りました。
そして子供のまま大人になった彰良は、子供からも子供目線で扱われる。
微笑ましいエピソードを見ることができました。
ですが、最後に大ピンチを迎えます。
うっかり本物の事件に巻き込まれてしまったようです。
生きている人の悪意は、怪異現象なんか目じゃないくらい、怖いものです。
でもハラハラした展開も悪くないなとか、思ってしまいしました。