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『SCIS 科学犯罪捜査班Ⅳ 天才科学者・最上友紀子の挑戦』中村啓(著)シリーズを読んで、赤ちゃんが、生まれてきて最初にすることについて考えました!④-3

SCIS 科学犯罪捜査班Ⅳ 天才科学者・最上友紀子の挑戦

序章(2ページくらい)を読むと、『新世紀エヴァンゲリオン』を思い出してしまいます。
カプセル型の容器が並ぶさま、容器の中のクローン。
想像すると、壮観というより、不気味で気持ち悪いという感覚が先に生じます。

なぜ生まれてきたのか、
生まれた瞬間は誰も、自分の運命を選べません。
でも普通の人間は、その後の人生を選べるし、幸せになることだってできると思うんです。

しかしカプセルに入ったクローンはどうなんでしょうか。
何も選べないし、自分の意志さえ持つことも許されないんでしょうか。
そうだとしたら悲しいことです。

クローンであろうと、オリジナルであろうと、一個人であることに変わりはないはずですから。。

実はこの問題については、90ページで、祐一が素敵なことを言います。
本当に、その通りだと思いました。

増殖するヒト
フランケンシュタイン博士の怪物が、現代に生成されるというお話です。

SCISのメンバーである玲音が、ある大学病院の治験ボランティアに参加しました。
玲音は、肩の細胞を科学実験のために提供します。

そして玲音の肩の皮膚細胞から培養されたオルガノイドが盗まれ、オルガノイドを培養した教授が行方不明となる事件が起こりました。

教授の専門は、リプログラミング技術(再生医療の分野)でした。
リプログラミングの説明は、長くて難しいものです。
109-117ページを2回くらい読まないといけません。

プログラミングの前に「リ」がついてますよね?
なんとなくなんですが、録音したテープを巻き戻して、再生するようなイメージを持ちました。

普通に考えて、男女が生殖行為を行い、受精卵ができるのが生命の誕生です。
受精卵は初期の段階では、どの細胞や臓器になることも可能な状態です。
これが細胞分裂を繰り返して、心臓の細胞になったり、脳の神経細胞になったりするわけです。
例えば心臓の細胞になってしまった後に、他の細胞や臓器に変化することは不可能になります。
そうやって1個の人間が出来上がって行きます。

それに対してリプログラミング技術とは、すでに分化した細胞を未分化の状態にまで戻すことで、身体を構成するあらゆる種類の細胞に分化することができる多能性を持った幹細胞を生み出すことができるのだそうです。


今回の場合は、玲音の肩の細胞を、受精卵と同じような状態まで戻し、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、腕や足の各組織に再生したということになります。

再生された臓器をオルガノイド(試験管内で三次元的につくられる臓器のこと)と呼びます。


ちなみに、IPS細胞は、身体の様々な組織や臓器の細胞に分化する能力と、無限に増殖する能力を持った細胞のことだそうです。

なので、IPS細胞を使ってリプログラミングを行えば、身体を構成するすべての細胞へと分化する能力を持った幹細胞を作り出すことができるということになるようです。

病気やケガなどで臓器や組織の損なわれた部位に、リプログラミング技術で再生した本人のオルガノイドを移植するという治療が、再生医療になるということなのかなと思いました。

ただし、最上博士によると、リプログラミング技術が再生医療に使われるのには、まだまだ障壁があるため、実用化はされていないとのことでした。

説明はこの辺にして、物語についてですが。
玲音の肩の細胞から培養されたモノがとんでもない変化を遂げるお話でした。
人間の手によって、勝手に誕生させられた怪物です。

生まれた瞬間に処分されることは、決まっていたと言っても過言ではありません。
悲しい生き物です。

本巻の158ページで、怪物が問います。
同じように『SCIS 科学犯罪捜査班Ⅲ』の151ページで、亜美のクローンも問いました。

"なぜ、何のために、私は生まれたのか?"と。


なぜ生まれてきたのかを考えた時点で、それはもう、人間なのではないでしょうか?
生きる意味を、知恵のない動物が考えるとも思えません。

動物の生きる使命は、自分の種を未来に1つでも多く残すことでしょう。
クローンである亜美は星来をこの世に残すことができましたが、、玲音から生まれたモノは、それをすることはできません。

だからこそ、自分が何で何のために生まれたのかを問うて来たのかもしれません。
この問題に答える最上博士のセリフに感動しました(158-160ページ)。
過去を見るのではなく、今この瞬間から未来へ向けての意識を持つことが重要です。
確かにその通りだと思います。

ところで、
この世に生まれてきた赤ちゃんが、最初にすることって何だと思いますか?

たぶんなんですが、生んでくれたママを「愛」することなのではないでしょうか?
自分は、世界一ママが大好きなんだと、全身で訴えてきます。
赤ちゃんのその気持ちは、言葉はなくとも、ママや周囲の人たちに自然に伝わります。

だから、ママへ向ける笑顔と、ママ以外の人に向ける笑顔が明らかに違っているのだと思います。

つまり、自分がママを「愛している」ということだけではなく、ママから「愛されたい」という気持ちが同時に芽生えているのではないかと想像します。

「愛」は一方通行ではダメなんです。

ママが特別なんだ!だから、ママも自分を特別と思ってよ!
と訴えているように思うんです。

自分は誰かを「愛することができる存在」であり、同じように、誰かから「愛されることができる存在」でもある。
それを知ることが、長い人生を生きていくためには、必要不可欠な通過儀礼なのだと思うんです。

よって赤ちゃんが、生まれてきて最初にすることは、「愛」とはどういうものなのかについて「学ぶ」ことです。

「愛」とは、言葉とか、頭で学ぶものではないのかもしれません。
心で学ぶことなのだと思います。
つまり人を愛することに理由はいらないのです。
ただ、愛している。
それだけなんです。

原初に生まれた生命(ルカ)
地球上に現れた最初の生物とは、いったい、どんなモノだったのでしょうか?

世界中の科学者が、その答えを探しているのだと思います。
LUCAというのは、地球最初の生物を指す言葉です。


これまで、最初の人類とか、原始時代の人類がどんな感じかを空想したことはあったんですが、地球の開祖になる生物というもののことを考えてみたことがなかったんです。

今、想像してみようと思っても、特に何も浮かびませんが、今後、私の人生の新たな課題として、空想していきたいと思うテーマになりました。

いよいよ榊原茂吉が登場しました。
そしてカール・カーンたちクローンの正体もわかってきます。
榊原と最上博士の対決がちょっとだけ見れました。
ですが、まだまだ何も解決していないとも言えます。