kei-bookcolorの文庫日和

文庫の良さを一緒に味わいましょう!

『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』佐伯さん(著)をご紹介します!パート①

しっくりくる小説

普段は、さんざん、文庫が大好きと豪語しています。
小説を電子書籍で読むことには抵抗があるとも思っています。
ですが、あまり紙にばかり頼りすぎると、時代に取り残されてしまうという不安もあります。
たまにはパソコンのように、自分自身の根本能力をアップグレードしておかなければ、いけません。
今はまだ私と同じ意見の人の方が、社会には多いのかもしれませんが、若い世代が成長して社会にどんどん進出してくると、私が化石になってしまう可能性があるからです。

まだまだあと30年くらいは人生を続けたいなと考えておりますので、時代の先頭集団を捉えるのは無理でも、最終集団の背中が見える位置を最低限キープして、速度は遅くとも、しっかりついていかなければいけないなあと思います。

とにかくですね、試しに電子書籍で小説を読んでみようという決心をしました。
何から読んだらいいのか迷ったあげく、ラノベから挑戦してみることにしました。

本作が気になったきっかけは、たぶん、主役の二人とその友人カップルが、なんとなく、米澤穂信先生の『氷菓』(「古典部」シリーズ)の主要キャラクターに似ているような気がしたからです。

読んでみたら、全然違ってましたが。。

昔から、自分でもよくわからないんですが、本には相性があるように思います。
基本なんでも読む派ですが、読んだ本については、客観的に面白いとか、いまいちだったとか評価することはできます。

ですが、自分にしっくりくる本だったかどうかは、別の話です。
そして本作は、何かがしっくりくると、読み始めてすぐに気が付きました。
なぜかはわからないのですが、なぜか心にじんわり、ろうそくの灯が灯るような感覚があるんです。
この正体をいつか知る日がくるのでしょうか?
知りたいような、ずっと探し続けていたいような不思議な気分です。

あらすじ

本作は『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』という題名なんですが、実際のところは、『お隣の天使様にいつの間にか真人間に再教育されている件』と言い換えてもおかしくないくらい、主人公の藤宮周(あまね)君が、素敵な男性へと目覚めていくお話です。

天使のように愛らしく、文武両道で、完璧なる美少女の椎名真昼ちゃんに、尽くされ、餌付けされる日々を送っている周くんが、彼女のために、彼女に相応しい男子になろうと、本来の自分を目覚めさせていきます。
もともと持っていた本来の魅力を取り戻したとも言えるのかもしれません。

周は真昼と出会う前の方が、遥かに、駄目人間だったように思います。

もともと、周は紳士的で目鼻立ちの整った男子なんですが、少々訳ありで、自分の存在を世間から隠そうと、こっそり隠れるようにして暮らしていたんです。
中学時代に何か問題があったようで、地元を遠く離れ、知り合いのいない場所で一人暮らしを始めます。

そしてヒロインの真昼はというと、これまた訳ありで、両親とは折り合いが悪く、マンションで一人暮らしをしています。

そんな二人が、たまたま同じマンションの隣に住むことになり、たまたま知り合って、互いに惹かれあうという、王道のラブコメです。

隣に住む隠れイケメンを見つけた美しいヒロインが、本当の愛を見つけ、生涯でただ一人の男性の胃袋を掴み、幸せになっていくストーリーなんだと思います。

お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件

主人公の周と、ヒロインの真昼は、同じ高校に通う学生です。
同じマンションの隣の部屋に住んでおり、互いの存在は知っていても、関わることも会話をすることも全くなく、完全に赤の他人としての高校生活を送っていました。

季節は秋になりました。
ある時、雨の中ずぶ濡れになった真昼を周が見つけます。
なぜか、ほおっておくことができない周は、真昼に傘を貸します。
この出会いから、不思議な二人の交流が始まりました。

自炊も掃除もできない周。
汚物部屋と化した周の部屋を、真昼が一緒に掃除し、毎日、かいがいしく食事の準備をするなど、なにかと世話を焼く真昼は、まるで通い妻のようです。

両親と折り合いの悪い真昼は、愛され方も愛し方も、わかっていないようです。
本当の意味で、誰かに心を開くことが、これまでの人生には、なかったのかもしれません。

そんな真昼は、自分でも自分の気持ちに気が付かないまま、周に心を許して無防備になっていきます。

そんな真昼を可愛いと思い始めている周は、自分で自分の気持ちを懸命に偽り続けます。

本巻は、高校一年の周と真昼が、出会ってからクリスマスを一緒に過ごすことになるまでの2カ月間を描いたストーリーです。

ただの知り合いから、友達に変化するまでの、もどかしくじれったい時間を楽しむことができます。

今時の若者っぽくない二人なんです。
まじめで奥ゆかしく、少し古風な感覚も作品から感じます。
自分自身の気持ちに気付くのにも、大変な時間を要します。

読んでいる側としては、長い時間待たされますし、ヤキモキもしますが、そこが奥手な二人の魅力でもあります。
ゆっくり待っているしかできません。

長い目で優しく、二人の行く末を見守る必要があります。

お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件2

主人公の周には、高校に入学すると同時にできた親友がいました。
赤澤樹です。

人と関わることを極端に避けている周の素の魅力を、なぜか、樹は知っていて、周の友人になります。
樹が周の友人になったのには、実はわけがあったのですが、それはまた別のエピソードで紹介されます。

そして樹には、中学時代からお付き合いをしている彼女:白河千歳がいました。
千歳は、人柄が良く、明るく元気で、ざっくばらんな美少女です。
樹もなかなかのイケメンなので、美男美女のバカップルとして、本作でも重要な役割を果たしているキャラクターになります。

樹だけでなく、千歳も周にとっては、友人と言ってよい存在です。

この二人(樹と千歳)に前巻の最後のほうで、周と真昼の秘密の関係が、バレてしまいました。

それ以後、樹と千歳は、真昼とも交流を持つようになります。
いずれは、真昼にとっての友人にもなっていく二人です。

本巻は、大晦日、お正月、バレンタインデー、ホワイトデー、春休みまでの4カ月くらいの期間が描かれています。

お正月では、周の両親が登場します。

真昼は自身の親とは折り合いが悪いため、周の両親の周に向けられた愛情がうらやましいと思っています。

ですが周の両親は、真昼にも愛情を注ぐようになって行きます。
特に、周の母親からは、溺愛されることになります。

周の愛情と、周の両親からの愛情を受け取った真昼は、今後、だんだんと変化していくことになります。

お正月と言えば、初詣です。
周の身なりが整われて、実は、隠れイケメンだったということが、ばっちりわかりますので、お楽しみに。

そうそう、最後に周と真昼の進展具合ですが、友達以上恋人未満くらいにまでは進展します。

二人はゆっくりと、二人のペースで着実に近づいて行ってますので、引き続き長い目で優しく、二人の行く末を見守りましょう。