作品の背景
マーチ伯爵家の次期当主であるクレアが、ロンドンで骨董店を開くところから物語は始まります。
伯爵家に、300年に渡って伝わる呪いのジュエリー「レディ・アン・ジュエル」。
捨てても売っても、いつの間にか必ず伯爵家に戻ってきてしまうジュエリーです。
そして呪いは必ず成就されます。
クレアは、この呪いを解くために、解くための鍵を探すために、骨董の中心地ロンドンに店を開いたのです。
「レディ・アン・ジュエル」の呪いとは、伯爵家当主に愛されたものが必ず命を落とすというものでした。
300年前から続くこの呪いのせいで、伯爵家当主の恋人や配偶者は、ことごとく不遇の死を遂げています。
クレアの異母兄を生んだ女性も、クレアの両親も、この呪いのせいで命を落としたのです。
つまり、この呪いを解かなければ、近い将来、クレアに愛された男性が死んでしまうということになります。
クレアには、骨董品の声が聞こえるという特殊能力がありました。
そして、「レディ・アン・ジュエル」は、「エデン・ブルーを探して」と言い続けています。
「エデン・ブルー」を見つければ、魔術師レディ・アン・リリーがマーチ伯爵家にかけた呪いが解けるかも知れません。
クレアは、アンティーク・ジュエリーたちの声を聞きながら、呪いの秘密に迫っていきます。
リリー骨董店の白雪姫 ラプンツェル・ダイヤモンドの涙
主人公のクレアが、ロンドンで開いた骨董店に、ある日、ジェレミーという柔和で美しい青年がやってきます。
彼は、今、ロンドンで話題になっているジュエリー「ラプンツェル・ダイアモンド」を持ちこみ、本物かどうか鑑定して欲しいと言います。
この「ラプンツェル・ダイアモンド」をクレアが手にすると、ジュエリーから
「助けて」
という必死な若い女性の声がしました。
それと同時に、「レディ・アン・ジュエル」に似たまがまがしい気配も感じるのです。
もしかしたら「ラプンツェル・ダイアモンド」は、「レディ・アン・ジュエル」と「エデン・ブルー」に関係しているのかもしれません。
半ば強引に、ジェレミーの鑑定人として、クレアはラスター伯爵邸で開かれる鑑定会に参加することになります。
ですが鑑定会が始まる前に思わぬ事件が起こり、鑑定会は中止に。
骨董品の声が聞こえるクレアは、レディ・アン・ジュエルの助言と、ラプンツェル・ダイアモンドの叫びに導かれ、ジュエリーの謎解きに挑みます。
リリー骨董店の白雪姫 海の底のエメラルド・プリンセス
ロンドンに骨董店を開いたクレアは、伯爵家の呪いを解く鍵「エデン・ブルー」の手がかりを探していました。
ラプンツェル・ダイアモンドの事件で知り合った宝石商のジェレミーは、毎日のようにクレアの店を訪れ、クレアへの愛情をストレートに表現して来ます。
ある日ジェレミーは、義母兄:バートから継母の遺品である指輪を渡されました。
売り払うように頼まれ、その指輪をクレアの店に持ち込みます。
指輪から呪いの気配を感じたクレアは、ためらいながら指輪に触れていきます。
すると、
「帰りたい、あの海へ」
という若い女性の声が聞こえてきました。
指輪の声を聞き、指輪の謎を解くことができれば、「レディ・アン・ジュエル」の呪いも同じように解くことができるかもしれません。
クレア、ジェレミー、セドリックは、それぞれの能力を生かし、指輪の謎に迫っていきます。
そして、クレアの気持ちにも大きな変化が起こります。
リリー骨董店の白雪姫 トワイライト・ルビーの夜明け
伯爵家の呪いを解く鍵「エデン・ブルー」は見つからず、伯爵家の呪いは解けないままなのに、クレアはジェレミーを愛し始めている自分に気づきます。
もし爵位が自分に移ったら、ジェレミーを殺してしまうかもしれない。
クレアは、不安に脅える日々を過ごしていました。
ある日、ブラウン姉妹に誘われて出席したお茶会で、アンティーク・ジュエリーが売り出されるかもしれないという話を耳にします。
それは最後の冒険の幕開けでした。
300年前、魔術師レディ・アン・リリーに、一体何が起こったのか?
魔術結社「エデン」創設者:ラルフの手記から聞こえる声が何を意味するのか?
300年もの間、解けなかった呪いは、解けるのか?
クレアたちは命を懸けて、レディ・アン・ジュエルとエデン・ブルーの真実に迫ります。
本作は巻末に、ショートストーリーが収録されています。
登場人物とジュエリー
●クレア・リリー
マーチ伯爵家の次期当主。17歳。灰色がかった薄青の目。白髪のような白い髪。
●ジェレミー・ライト
ラスター伯爵家の三男。23歳。つややかな栗色の髪。濃い緑の目。美しい青年。
●セドリック・ノエル
クレアの異母兄、庶子。19歳。黒鳶色の髪に焦茶色の瞳。整った顔立ち。
●オーガスト クレアのリス
●バート(ファーディナンド)
ラスター伯爵の長男。ハーバート子爵。ジェレミーの異母兄。黒髪に銀縁眼鏡。端整で理知的で冷たい感じの顔立ち。深緑の瞳。
●ロビン・スコット
骨董商。灰色がかった金髪の青年。すみれ色の目。
●バーナード・リー・フィッツレイン
フェアヘヴン公爵。11歳。骨董蒐集家。飴色の巻き毛。金茶色の瞳。天使のような美少年。
●ヤン・クーベリック ジュエリーデザイナー
●ハンナ クレアのレディーズメイド
●アーネスト クレアの執事
●ピーター ライト&クーベリックの店員
●ジョージ ラスター伯爵家の老執事
●アンソン男爵夫妻
ラプンツェル・ダイアモンドを購入したと主張している。
●ミセス・ハリス ラスター伯爵夫人のレディーズメイド
●リジー/ポリー/アニー/ドリー ブラウン家の4姉妹
●ベアトリス・コーダー
コーダー男爵のひとり娘。17歳。黒髪。
●トムソン エルズミア侯爵の別荘の管財人兼代理人
◎レディ・アン・ジュエル
ルビーのペンダント。マーチ伯爵家に伝わる呪いのジュエリー。息を呑むほどに美しく、まがまがしいジュエリー。
◎エデン・ブルー
ブルーダイヤモンドのペンダント。レディ・アン・ジュエルの呪いを解く鍵。
◎ラプンツェル・ダイアモンド 伝説的なジュエリー
◎エメラルド・プリンセス ジェレミーの継母の遺品