kei-bookcolorの文庫日和

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『リリー骨董店の白雪姫』の感想をお伝えします!

白川紺子先生の作品

『後宮の烏』がアニメ化された影響ですかね、書店にいくと、白川先生の最近の作品が平積みになっているのをよく見かけます。

白川先生と言えば、ほとんどのヒロインには「兄」がいます
兄が妹を守るのが定番とも言えます。

ですが兄は所詮、兄なんです。

どんなに守っても最終的には、妹が恋した男性に取られてしまうというのもまた定番です。

今回、紹介する「リリー骨董店の白雪姫」は、なんとヒロイン:クレアにも、相手役の男性:ジェレミーにも「兄」がいるという設定です。
兄たちがそれぞれの妹と弟を守っています。
兄たちの報われない愛情も見どころの一つとなっています。

白川先生と言えば、あともう一つ、特徴があるように思います。
どのヒロインも、とても強いんです。どんな強敵と戦っても、一人で打ち勝ってしまいます。本作のヒロイン:クレアが、ピンチをどうやって切り抜けていくのか、最後まで目の離せない展開が続きます。


リリー骨董店の白雪姫 ラプンツェル・ダイヤモンドの涙

クレアは、シャムネコのようなイメージです。
警戒心が強いようでいて、実は無防備です。
素直で純粋で、まるで天使のように穢れを知らない少女です。

か弱い少女ではありますが、強い信念を持っているせいか、たまに、頼もしい感じにも見えます。
クレアの純粋さが、敵の心も砕いてくれると信じたいところです。

王子様役のジェレミーは、見かけ通りの青年です。
ハンサムで、誰にでも優しくて紳士的です。
でもそれがちょっと軽薄な男性にも見えてしまいます。

不遇の幼少期を乗り越え、素敵な男性に成長したようです。
生い立ちが不幸でしたが、誰かを恨むこともなく、今を生き、クレアを愛してしまうわけです。

二人は、もうすでに恋心が芽生えてしまっています。
急いでジュエルの呪いを説かなくてはいけません。
同時に、よこしまな思いでジュエルを狙い、自分のエゴのために犯罪を犯す敵をも倒さねばなりません。

初巻ですでに、どういった人間のどういった思惑があるのかは、明らかとなりました。

忘れてはいけない、もう一人の王子様役は、クレアの兄セドリックです。
セドリックのツンデレぶりにも心惹かれます。

彼はクレアをただの妹として愛しているのか、それ以上の愛情があるのか。

クレアとジェレミーにはもちろん、幸せになってもらわないと困りますが、セドリックにもぜひ、自身の幸せを見つけて欲しいと思います。


リリー骨董店の白雪姫 海の底のエメラルド・プリンセス

海のプリンセスと言えば、人魚姫ですよね。
題名も暗示していましたし、読み始めてすぐ、そのことに気づかされます。
結局王子様は、人間の女性を選ぶんですよね。

さて本巻では、ジェレミーの兄バートが登場します。
前巻でもちょっぴりは出てましたが。

女癖の悪い男から生まれた異母兄弟。
互いに複雑な思いを抱えながら、生きてきたんです。

ジェレミーは、兄の本当の気持ちに気づくことができました。
そしてクレアへの気持ちもはっきりと自覚して来たようです。

それにしても、バートとセドリックのキャラがかぶっているような気がするのは気のせいでしょうか? 
兄というものは、かくあるものなのかもしれませんね。

妹や弟は、自由奔放に生きていて、それを羨ましいと思いながらも、優しく見守っている存在。
いざとなると、全力で助けてくれる頼もしい味方。
兄とは、そんな存在なのかもしれませんね。

前巻では、全く見えてこなかった呪いのレディ・アン・ジュエルですが、バートの登場により、大きく真相に近づいてきたように思われます。
それと同時に、残り時間も少なくなってきました。
こうなったら、消極的だった兄たちも、総動員で手伝うしかなくなったわけです。
妹と弟を救う道を。

世の中には偶然が重なるタイミングというものがあります。
いくつもの偶然が重なって、それが風を巻き起こすことになり、大きなうねりとなって、世界が切り開かれるわけです。
それはもう必然、もしくは運命なのではないでしょうか。

本巻での呪いのレディ・アン・ジュエルは、呪うだけではなく、持ち主を助けようともしているように感じました。
次巻に持ち越された二人の運命。
どんな結末を生むのか、二人だけでなく、皆が幸せになる方法があるのか、とても楽しみです。


リリー骨董店の白雪姫 トワイライト・ルビーの夜明け

レディ・アン・ジュエルが反応していた理由、私もすっかり勘違いしていました。
なるほど、そういうことだったのか!と納得してしまいました。

それにしても、2人の兄たちの気分は複雑なものだったのでしょう。
それぞれ妹と弟を守るために必死です。
兄たちにも、業というか使命みたいなものがあったのだと思います。
過去から託された役目を果たさなければならないというような。

一方、クレアとジェレミーも大きな問題に決着をつけなければなりませんでした。
そう、死んでしまうとわかっていても愛することができるのか、という問題です。
二人が幸せになる選択をしてくれると信じて読んできましたが、ハラハラしました。

苦しい決断をしたから、二人は、レディ・アンを救えたのかもしれません。

レディ・アンとラルフのすれ違う思いや、本当の気持ちに気づくことができたのは、やはり、クレアがジェレミーを愛したからなのではないかと思うんです。

人を愛するということがどういうことなのか、クレアが実感しなければ、解決するのは難しかったのではないかと思うんです。

つまり、ジェレミーと出会わなければ、エデン・ブルーを見つけたって、呪いは解けなかったのだと思います。

本当の愛を目の前にすると、人は皆、臆病になります。
勇気を振り絞って1歩前へ進みださなければ、自分どころか、相手さえ不幸になってしまうんだという教訓をジュエルが教えてくれる物語だったのかもしれません。