kei-bookcolorの文庫日和

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『宝石商リチャード氏の謎鑑定』シリーズ3・4・5『天使のアクアマリン』『導きのラピスラズリ』『祝福のペリドット』辻村七子(著)の感想を書きました!②

天使のアクアマリン

毎回、事件は向こうからやって来ます。
それに巻き込まれて、解決せざるを得なくなります。

ですが、今回は、やっても来たけど、リチャードが自ら解決に立ち上がるお話がありました。
さらに、これまでは謎だらけのリチャードでしたが、リチャードの素性や過去の一端が明らかになりました。
そしてまさかの結末でした。
思い切った展開でした。

正義は正義の味方です。
常に誰かのために生きてます。
だから、自然と周りに気を配って生きているような気がしていました。

ですが、ちょっと勘違いしていたように思いました。
正義は周りを大切にしてますが、ここぞという時には自己主張を強くするタイプだったんです。

自分の主張は決して曲げませんし、ここぞという時には頑固です。
だから、こうなると周りが正義に合わせるしかなくなるわけです。
存在感が強いのです。
誰もが、無視できなくなる存在です。

いつの間にはリチャードの心に入ってきて、リチャードの中に住み着いてしまったのかもしれません。
たぶんリチャードもそれが分かったのではないでしょうか。
認めたうえで、何か思うことがあり、決断を下したのでしょう。

至って平凡な日常に、異国の王子様が舞い込んできて、非日常的な体験をすることになった正義にとっては、辛い結末でした。

でも、それ以上にリチャードの方がより辛かったのではないかとすら思えます。
互いの関係を見直す、いい機会なのかもしれません。

宝石ですら、削ってみたり熱を加えてみたりと、様々な加工をするわけですから、人と人との関係だって色々あって当然です。

常に同じでなくていいわけだし、時とともに変化することだって致し方のないことです。
リチャードが何を思って行動しているのか、早く続きが知りたいです。

 

導きのラピスラズリ

読みながらだんだん、こっ恥ずかしい気分になってきます。
ええっと、どういうことなの正義!って、何度も何度も言いたくなりました。
壮大な「愛」の物語でしたね。
いっそ、そっちにいったらどうなのよ!って、何度も何度も思います。

ですが、寸でのところで、二人の関係は、思いとどまってしまうんです。
逆に、もったいない。
非常にもったいない。
実にじれったい!と、最終的にはため息がでます。

物語序盤は、リチャードが雲隠れしてしまったので、正義が一人で頑張ります。
頑張って、リチャードが消えた謎と、リチャードの行方を追うわけです。

正義は何かに導かれるかのように、リチャードへの旅路に出向します。
突然、グローバルな展開になりましたし、これまでの話とは全く、スケール間が違ったストーリー展開でした。

こんな大ごとだったとは、夢にも思いませんでした。
なんせ、謎の貴公子リチャードの正体が明らかとなりましたからね。

ついでに、リチャードの師匠も出てきますし、とにかく登場人物たちが豪華絢爛でした。

正義はリチャードに出会ったことで、大きく人生が変わったわけですが、実は、リチャードの方が、正義のその何倍もの大きな変化を味わうことになったんです。

まさに正義のおかけ。
正義様様なんです。
これでリチャードはもう、何かを我慢する人生とはオサラバできるわけですし、本当に良かったです。
二人の絆も深まりましたし、ある意味一生切れない縁を結ぶことになったわけですから。

 

祝福のペリドット

前巻で、リチャードの秘密が明らかとなりましたが、本巻では、さらに突っ込んだリチャードのエピソードが語られます。

リチャードの人生に起こった具体的なエピソードです。
どんどん丸裸になっていくリチャード。

神秘のベールは、剥がれ始めると、とめどもなく、剥がれ続けていくかのようです。

謎の宝石商だった頃は、近寄りがたく、遠巻きに見ているだけの存在だったリチャードですが、今となっては、そんな壁も取り払われ、身近に感じるようにもなりました。

それと、リチャードもただの人なんだと思えるようになったというか。
とにかく、かなり親しみやすくなりました。

本人も変わったということを認めてますし、正義も何となく気づいたようです。

二人の関係は言わば、友達以上、恋人未満と言ったほうが、しっくり来る感じです。
もはや、ただの雇い主とバイトではありません。
たぶん、とっくに。

それにしても、正義は本当に公務員になるつもりなのでしょうか?
お役所仕事とかって、全く向いてなさそうですし、会社員っていうのも、なんかしっくり来ない感じです。

本人以外は、皆、正義が目指すべき将来を見据えているというのに、本人だけが気づいてないんです。

鈍感にも程がある。

周りの機微に気づかないのが鈍感なんだと思っていましたが、自分のことにすら気づかない鈍感もいるんですね。
ちょっと間抜けにも見えます。

ものすごーく遠回りをして、人一倍時間をかけて、いつか気づくパターンなのかもしれません。
正義らしいといえばらしいんですけどね。

その遠回りも正義には必要なプロセスなんでしょうしね。

クリスマスとか誕生日とか、世間が盛り上がっている日に関しては、私も苦手なので、正義の気持ちが少しわかる気がします。

特別な日を、普通にいつも通りに過ごしたいだけなんですけどね。
周りがそれを許してくれない。
付き合いたくはないけど、空気を読んで、付き合うしかない。
そんなプレッシャーは、私も感じています。
毎年ね。
だから憂鬱です。

でも当日になれば、それはそれで楽しめますし、、正義とリチャードのクリスマスも、なかなか素敵でした。
来年は、きっと、もっと派手に過ごすんでしょうね、きっと。