kei-bookcolorの文庫日和

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『宝石商リチャード氏の謎鑑定』シリーズ6・7・8『転生のタンザナイト』『紅宝石の女王と裏切りの海』『夏の庭と黄金の愛』辻村七子(著)の感想を書きました!③

転生のタンザナイト

巻冒頭と末のエピソードは、何でしょうか、、リチャードと正義のいつかの未来らしきものが、ちょっとだけ垣間見れた感じがしました。
正義、恰好よく成長するんですね。
少し安心しました。

そして本編ですが、エトランジェにやっと通常の日常が戻ってきます。
エトランジェに訪れる、もしくはエトランジェに関わる人々の日常の謎を、いつも通りリチャードが説いていく。

特に谷本さんがエトランジェに訪れるエピソードは、面白かったですよね。
とうとう正義を巡っての三角関係か?と、ちょっとドキドキしながら読みましたが、リチャードが何故、谷本さんをエトランジェに招いたのか、そこにも謎があったのが驚きでした。

宝石が人を呼んで、人と人を結んでいく。
不思議な縁もあったもんだなと思いましたね。
谷本さんもいっそ、宝石商を目指したらいいのにねって、思いました。

そして正義との関係も、ある意味はっきり決定しましたよね。
読者としては、やっぱり正義はリチャードとくっついて欲しいという強い願望があるので、3人の関係は、このままであり続けて欲しいという気持ちもありますし、でも正義の気持ちも優先してあげたいという思いもありますし、何だか複雑な気分です。

そして最後に、正義の実の父が登場して、正義がとんでもないピンチに陥ります。
リチャードに相談できず、谷本さんにも背を向け、どんどん孤独になっていく正義。

しばらく正義の試行錯誤が続き、どうなってしまうのか、ハラハラしました。

リチャードがどう解決していくのか?ある意味圧巻な解決方法を取りましたし、というかこれしか方法はなかったよねと納得します。

これで、リチャードの家族も、正義の家族も、全部出そろいました。

この巻は、二人の分岐点だったのかもしれません。
どさくさまぎれに、リチャードの告白も聞けましたし、、リチャードの正義への気持ちを聞いた瞬間は、キャー!ってなりました。

今後の二人は新たな展開で一緒に歩んでいくのではないかな?と思いました。

初めての作者からのメッセージがあります。
やっぱり、本巻は特別な巻だったのですね。
人を好きになる気持ちに、理由がないように、美しい石を見て癒される気持ちにも理由はないのかもしれません。

人には人それぞれ、事情がありますよね。
そして石には、歴史が存在します。
人の歴史と連動しているかのようにも感じます。

石って、人が手に取るから輝くのかもしれませんよね。
今後も、美しい石とともに、二人が活躍していって、、その活躍を応援していけたらいいなと思います。

 

紅宝石の女王と裏切りの海

副題に「裏切りの海」とついていますよね。
この裏切りが一体、どんな形のものなのか。
最後までわかりません。
想像できない展開で終わることは確かです。

そして、新たな火種が生まれたことも確かです。

本巻もまた一段と、グローバルなスケールの大きなストーリーでした。
豪華客船、ジュエリーショー。
目もくらむような煌びやかな世界で巻き起こる事件、その真っただ中にいる正義。

リチャード以上にリチャードの影響で、災難に見舞われる正義。
正義が正義でいると、どんどん事件に巻き込まれていくようにも思うんですが、止めることもよけることも、正義を変えることもできないので仕方がないのでしょう。

最終的には、どんな苦難に見舞われても、絶体絶命のピンチが訪れても、二人で一緒に乗り切っていく、解決していくしかないのかもしれません。

もう別れることもできませんしね。
別れるなんて選択肢は二人にも、読んでる我々にも全くないのですからね。

それにしてもセクハラおやじの所業には、ずっとイライラさせられます。
正義と一緒に、私も憤慨していました。
どうにかギャフンと言わせないと気がすみません。

リチャードと正義は最後まで大人な対応をしていました。
まあでも別の方向から、ある意味片が付いたので、安心はしました。

あんな悲惨なリチャードを見るのは、堪えられませんしね。
正義も私も。

でも本当に、リチャードの美貌は、リチャードを不幸にするだけで、幸せにはしてくれないんだと、心から思いました。
いつかそれ相応に年を取れば、美貌も陰るのでしょうけど、いつになることやら。

陰らないで欲しいという気持ちも強いですし、複雑です。
きっと最終的には、幸せになってくれると信じるしかない今日この頃です。

 

夏の庭と黄金の愛

リチャードと正義の厚い熱い信頼関係は、どんどん強固なものになっていくようです。
離れるという選択肢はすっかり無くなってしまいましたし、二人で一緒に乗り切ることが大前提で、そもそものスタートラインが、初めのころよりずっと先に位置している。
そんな感じになってきました。

そして、相変わらず、男性同士の友情とは思えないほどの、深い愛情も感じます。
男性が男性に、美しいと言えてしまう世界って、どうなんでしょうかね。

リチャードの気持ちもちょっとわかります。
でも、心の底では、喜んでいるリチャードも想像できてしまいます。

初めのうちは、読んでいるこちら側が恥ずかしくて、耐えられないものでしたが、案外なれるものなんですね。

今ではすっかり、正義のセリフも受け入れられるようになりました。

さて、本巻ではリチャードの母が登場します。
以前から興味はありましたが、まさか、こんなに全面的に登場してくるとは思ってもいませんでした。

初めのうちは敵なのではないかと構えてしまいましたが、無邪気で、どこか憎めない可愛らしさが、こちら側にも伝わってきました。
その破天荒さは、ある意味想像通りでしたけどね。

これでリチャードの父方の家族と、母方の家族の情報は、あらかた揃いましたよね。

あとは、謎の少女オクタヴィアが登場してくれるのを待つのみです。
今回、やっぱり助けに入ってくれたヴィンスが、口走った一言が気になります。

オクタヴィアは謎すぎて、どんないわれの因縁があるのかが、ちょっと想像できないんですけど、ヴィンスに関しては、わかるようなわからないような、もうちょっとのような感じがしてなりません。

おそらく次巻でも、レギュラーのごとく登場しそうですし、今後の展開に期待しましょう。