kei-bookcolorの文庫日和

文庫の良さを一緒に味わいましょう!

『宝石商リチャード氏の謎鑑定』シリーズ1・2『宝石商リチャード氏の謎鑑定』『エメラルドは踊る』辻村七子(著)の感想を書きました!①

初めて手にした時の印象

本作は、4年くらい前にアニメ化されたんですが、その直前に慌てて読んで、アニメの放映までに間に合わせた覚えがあります。

8年くらい前に、初めて本屋の平積みにドーンを並んでいる本作を見たときは、とにかくインパクトが強く、無視することのできない作品だなという印象でした。

当時はまだ、ライト系の小説棚を専用に置いている本屋が、私の周辺にはなかったので、一般文芸の文庫の平積みに置いてあったんですが、他の文庫の表紙が、今ほどはキャラクターを描いている作品が少なかったので、とにかく目立っていたなという印象でした。

当時、ライトミステリーで、今後シリーズとして長く続きそうな作品で、恋愛ものの小説を何か1シリーズ読もうと思っていて、本屋で実物を眺めながら探していたのですが、本作と、『京都寺町三条のホームズ』が、とにかく際立って目立っていました。

8年前は悩んだ末、『京都寺町三条のホームズ』を選んでしまったんです。
『宝石商リチャード氏の謎鑑定』は恋愛は難しそうな気がしたので。
その後4年くらい放置していたら、いつの間にか10冊近く刊行されていて、さらにアニメ化されることが決まっていたというわけです。

表紙からはBLのような匂いも感じますが、決してそうではありません。
いやでも、個人的には、主役の二人が恋愛してくれてもいいなとは思うんですが、そこはちゃんとノーマルな二人なんです。
残念ながら。

恋愛はなくても、問題なく楽しめる作品です。
そして初めは日本が舞台だったんですが、ある瞬間から、一気にグローバル化していきます。

ただの友情と呼ぶには、その言葉が陳腐に感じるほど、二人の結びつきは深いものになっていきます。
その過程を味わいながら読む作品だと思います。
そして宝石のようなリチャードを愛でて楽しみましょう。

宝石商リチャード氏の謎鑑定

題名のとおり、主人公はリチャードになるのかもしれませんが、語り手は正義です。
読者としては、正義が主人公と言った方がしっくりくるように思います。
もちろん探偵役はリチャードで、相棒兼助手が正義です。

言わば歩く宝石といっても過言ではないリチャードですが、リチャード自身は宝石を身に付けている感じがしません。
1巻ではそんな話題は出なかったように思われます。

商売道具を身に付けた方がいい職業と、そうとも言えない職業があるのかもしれません。

リチャードは期待を裏切らない、ある意味想定内のタイプではありますが、やっぱりそれでもその美しさにハマってしまいます。

どちらかというとライトミステリーなので、事件という規模の事件が、今のところは起きていませんが、宝石をめぐる人間関係と、不思議な謎に迫るお話です。

石にはそれぞれ固有のパワーがあります。
本巻は石によって、みんながちょっとずつ幸せになっていくような、フワッとしたお話ばかりでした。

今のところ、訪れるお客様の謎に向かい合っていくお話ですが、一番謎なのはリチャード自身ではないかと思います。

いずれは、リチャードが何故宝石商になったのか、何故日本にいるのか、家族はどうしているのか、そもそもどこに住んでいるのかなど、解き明かされていくことになります。

リチャードを見ていると思います。
石や宝石は、人を幸にも不幸にもするし、容姿が美しいからと言って幸せとは限らないのかもしれないと。

さてもう一方の正義ですが、その名の由来に纏わるミステリーと、その名に恥じない生き方をしなければならないという枷がありました。

でもその枷のおかげでリチャードと出会うことになったわけです。
訪れるミステリーを一緒に解き明かすことによって、二人の関係性が特別になっていきます。

これから末永く続く二人の第一歩になります。

宝石商リチャード氏の謎鑑定 エメラルドは踊る

「エメラルド」は本当の犯罪に関わるお話でした。
日本でおきる犯罪とは少し毛並みが違っていました。

外国人のリチャードだから気づくことのできた犯罪なのかもしれません。
想像できなかった結末でした。

美しい石は、人を守るものであり、人を危険な道に誘い込むものでもある。
幸にも不幸にもする。

石には何の罪もないのに、悲しい限りです。

正義の正義が仇となるお話もありました。
結局、身も蓋もない結末となってしまい、後味が悪くなってしまいます。
けれど、正義とリチャードの中は深まったのでよしとしてもいいのかなと思います。

外見で言うと、リチャードが女役のBL的な展開を予想できるイラストだと思うんです。
けど、実際のところは、正義のほうが家庭的で女子力高い感じですね。
(私はプリンが苦手なので、牛乳寒天の方が気になります。)
思っていた感じとちょっと違っていて、役割が逆転しているようにも思われます。

結果的に、危なっかしい正義をリチャードがそばで守っているような、ずっとそんな展開でした。

自分で自分のためにガーネットを購入しようとする女性が出てきました。
私も独身主義ですし、誰かに頼ることのできない性分なので、ある意味、戦うガーネットかもしれません。

綺麗な人のほうが普通の人に比べて何倍も得をしていると思っています。
けど、綺麗な人を羨む気持ちはあっても、恨む気持ちはありませんし、その人にとって代わりたいとも思いません。

自分には自分にしかなしえない人生があると思っているからです。

キャッツアイという石があることを本作で初めて知りました。
本物はとても高価なんでしょうね。
見る機会があったら見てみたいです。

キャッツアイをリチャードのところに持ち込んできたのは、小さな男の子でした。
子供らしい勘違いで、ちょっと微笑ましいお話です。

私は子供の頃、実家で犬を飼っていたんですが、家族の事情で、ある日犬を手放すことになってしまったんです。
親からそれを告げられた時の憤りを思い出してしまいました。

そういえば犬と一緒に家出もしたんですよ。
あの時は、幼いながらも自分しか犬を守ることができない、私が守らなければという使命感に駆られていたように思います。
思い込みも激しかったんです。
そんな自分と物語が重なって、少し感慨に耽ってしまいました。