kei-bookcolorの文庫日和

文庫の良さを一緒に味わいましょう!

『トリックスターズM 』『トリックスターズC PART1』『トリックスターズC PART2』久住四季(著)をご紹介します!パート②

最後の追い上げ

巻を重ねるごとに、作品にのめり込み、読むスピードが加速していきます。
メディアワークス文庫にしては、字が小さくて、1冊1冊がぎっしり詰まっているんですが、苦痛を感じさせることも、飽きさせることもありません。
あの手この手と、新たな趣向が繰り広げられ、ミステリー好きの読者の心を揺さぶります。
ベタですが、ゾクゾク・ワクワク感が半端ない感じです。

一斉に、全部投入してきたか!
という驚きと羨望の眼差しで、最後まで、100メートル走を一気に走り抜けるような勢いで読破しました。
完走した後の爽快感は、半端ありません。

これで終わりなのが、本当にもったいない作品です。
そして、本格ミステリー好きの方々には、絶対に、読んで欲しいと思う作品でもあります。

トリックスターズM

冷たい眼差しで、気だるそうにこちらを向いている佐杏が表紙です。
愁いを帯びた表情が魅力的です。
どんな問題があろうと、どんな事件が起ころうと、軽くかわして行きそうな安定感を感じます。

前巻は学園祭初日のお話でしたが、本巻は学園祭2日目のお話です。

とても楽しみにしていた学園祭なのに、初日も2日目も、事件に巻き込まれて、祭りを満喫することのできない佐杏がここにいます。

周は、どうやらトラブルメーカーのようです。
魔術師というもの自体が、トラブルメーカーの可能性もありますが。。

過去視は、確定した現実を見るものだから、変動することはありません。
しかし、未来視とやらは、ある程度約束された未来ではあっても、確定されたものではないわけです。

なまじっか知ってしまったがために、余計な苦労を強いられる可能性が高い。
過去視に比べると、かなり、やっかいな代物なのではないかな?とも思います。

知ってしまったことで、難しい選択をしなければならない局面も来るんでしょう。
知ってしまったことで、未来が変わってしまう可能性も0ではない。
特別な力を持つということは、強運をもたらす半面、災いも間違いなくもたらすことになる。
もしかしたら、災いの方が大きい可能性もあります。

ない方が幸せな人生を送れるのかもしれません。
普通が1番とか言うやつです。

一度、負の連鎖に陥ると、落ちるところまで落ちてしまいそうで、ちょっと怖いです。
いつしか自分を見失ってしまいそうです。

佐杏は、自分を見失うことなく、我が道を行っているような気がするので、最強の魔術師でいられるのかもしれません。
独自の正義と強い意志を持っているように思えます。

そして周が、自分をしっかり持って生きていけるように、導いているような気もします。

最終的に、意志がより強いものが生き残っていくのかもしれません。
自分というものを持っていない人は、誰かに支配してもらうしかないからです。

誰かに帰属して生きるなんて、まっぴらごめんです。
自分自身を認め、強い意志を持ち、時には意志を表に出すこと、それは、どんな人にも大切なことなんだと思います。


トリックスターズC PART1 PART2

 

Part1は、左を見ている佐杏が表紙です。
Part2は、右を見ています。
同じ佐杏のようで、どことなく違う。
Part1は何かを狙っているような、鋭い目をしている。
でもPart2は、やや虚ろな眼差しで、どこかを見ているようで、何も見ていないような、焦点が合わない目をしている。
個人的には、Part1の方が好みです。

何というかその、学園祭と言うより、運動会を連想してしまうような展開が待ち受けていました。
運動会と言っても、競技はそう、強いて言うなら、借り物競争?のイメージです。

成り行き的に自然と、2人から4人で1組のチームが出来上がっていて、それぞれのグループで推理を繰り広げている。

さらに、それぞれがそれぞれの都合と思惑で動いている。

学生らしく、恋愛に絡む事情が、それぞれに生じていて、なぜか、事件に巻き込まれてしまった。
ありていに言えば、そんな感じで何です。

最終回にふさわしく2冊にまたがっての長さでしたし、登場人物の数も、これまでの倍にはなったんじゃないかな?と思います。
登場人物の半分は、新しく登場したキャラクターだったとも言えます。
個性豊かで、バラエティーにとんだ方々ばかりだったと思います。

前半戦は、周がほとんど登場せず、佐杏が積極的に事件を追うなんていう珍事になっていました。

後半戦は、気が付くと佐杏の姿が見えなくなっていて、佐杏意外のキャラたちの紛争劇となっていました。

そして、途中参戦した周が、今度は活躍する場でもありました。

本作は、いろんな意味において、周の物語だったのかもしれません。
やっぱり主役は周なんです。
周を巡る物語なんだと思います。

事件に翻弄された人々は、結局のところ、くたびれもうけだったのではないかな?と、最終的には思ってしまいました。

出逢えば、分かれる。
それが人生の道理です。
別れたからといって、関係が消滅するというわけでもないことも、また、道理です。

周は結局のところ、2人の魔術師に愛されているってことなんでしょう。
おそらくこの世で最強の魔術師2人です。

でも、たぶんなんですけど、周はいつか、この2人の魔術師を超える存在になるという予感がします。

周が周であり続けるかぎり、きっとまた、周の物語が、世界のどこかで繰り広げられるはずです。
いつかそう、また魔術師たちが相まみえる日がきっと来ます。

その時、周が何を思い、どう動くのか、読者としては想像せずにはいられません。

佐杏と周の対決も見てみたいですし、佐杏と周の師弟愛も見てみたいですし、佐杏と周が男女として見つめあう日が来たら、もっと嬉しいんですけど、、まあそれは、置いといて。

とにかく二人の行く道は、ある意味において一緒であると信じたいです。
二人の出会いは必然だったはずですからね。