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『契約結婚はじめました。椿屋敷の偽夫婦』白川紺子(著)の感想をお伝えします!パート②

契約結婚はじめました。3 椿屋敷の偽夫婦

意外ですが、、
柊一のほうが先に、自分の気持ちに気づきました。
そして、俄然やる気が出てきました。
もちろん恋敵である香澄の兄も本気です。

柊一のいけないところは、肝心なことになると、香澄に隠してしまって、笑顔で誤魔化してしまうところだと思います。
それでたまに、香澄を傷つけているようにも見えるんです。

すみれさん(柊一の親戚)には本音を言えたのに、どうして香澄には言えないのだろうかと、歯がゆい限りです。
そういえば、香澄もすみれさんに初恋の話をしてましたが、もしかするとすみれさんの人柄が、本音を口にしやすくさせているのかもしれません。

これまでの人生で、椿に注目するような場面に遭遇したことがないので知らなかったのですが、椿と一口に言っても、多くの種類があるようです。

品種によってつけられている別名も、感慨深いものがあります。
私も椿屋敷に行ってみたいと思ってしまうほどです。

そして今回は、すみれ荘(椿屋敷の近所にあるアパート)の住人達が集う会がありました。
香澄の兄(すみれ荘の住人)もちゃんと参加してました。
香澄の兄は、無表情ですが、案外、付き合いやすい人なのかもしれません。

でも白川先生の作品は、兄が幸せになる可能性が低いんです。
不幸になるわけでもないんですが。
思えば、可愛そうなものです。

おそらく10年くらいは、香澄のそばに寄り添っていたんでしょう。
ずっと愛してきた大事な女の子を、昨日今日現れた、どこの馬の骨とも知れない男に横からかっさらわれたわけです。
悔しいし、そんなに簡単にはあきらめられるはずもありません。

でもこの兄も柊一も、どちらも本当にいい男なんだなと思ったんです。
どちらも、一番に考えているのは香澄の幸せだと思うからです。
だから香澄が嫌がることは決してしないでしょうし、悲しませたり泣かせたりもしないはずです。
例えば香澄が、どちらも選ばないという可能性だってあるわけです。

今のところ、何も気づかずに、のんきにしている香澄ですが、水面下では、すでに三角関係の火花はバチバチと散っているわけですね。



契約結婚はじめました。4 椿屋敷の偽夫婦

すみれ荘のほうが急展開になりました。
遥ちゃん(すみれ荘の住人)のファインプレイです。

つくづく思うんですが、大人が浅知恵で策を弄するとうまくいかないものです。
子供が素直に感じたことを表現するほうがよっぽど建設的ですよね。

遥ちゃんは、小さいですからいつも下から大人を見上げています。
大人は表向き大人に向けての顔を繕いますけど、近くに子供がいるということを忘れがちです。
ふとした瞬間の顔(繕ってない顔)を見られていることに、少しも気づいてないわけです。

そして残念ですが、椿屋敷のほうは、まだまだ時間がかかりそうです。

本巻が面白かったのは、やはり柊一と香澄の兄:晶紀の関係ですかね。

柊一は、香澄と晶紀兄妹に出会ってしまったということになるのでしょうか。
友達も作らず、恋もしない柊一が、奥さんと友人を一挙に手に入れてしまったわけです。
友達のほうは、香澄にもれなく付いてきただけという感じではありますが。。
拒否する権利がなかったので受け入れるしかないわけです。

それにしても偽夫婦だということが、あっちこっちでバレてしまっています。
いますが、みんな二人を暖かく見守ってくれますし、反対する感じでもないわけです。

それもこれもみんな、香澄の幸せを願っているということになるんでしょう。
香澄も柊一も確実に成長はしていますし、もう一息です。

晶紀はなかなかにいい男なんです。
自分の恋心も、香澄のために打ち明けない方向で生きてますし。
柊一のことも頭ごなしに反対するのではなく、人となりを見極めようとしているかのようです。

勢いと事情があったことは確かですが、柊一は、香澄が選んだ人です。
どんな事情があろうと、正式に籍を入れるってことは、それなりの覚悟が必要ですし、誰でも良かったわけでは決してありません。

柊一が香澄に一目ぼれしたと、以前、言っていましたが。。
あれはあながち嘘ではなかったということなんでしょう。



契約結婚はじめました。5 椿屋敷の偽夫婦

白川作品に登場する兄は本当に大変です。
自分を抑えて生きていかねばなりません。
白川先生は、兄が好きなのだと思っていました。
だから毎回素敵な兄が登場するのだと思っていました。
でも、兄はいつも辛い目にあう。
それでも兄をやめられない。
そして兄という安全圏を兄は常に確保している。
辛いのか幸せなのか、複雑なところです。

今回、主人公の柊一は、檀の兄です。
兄が主役という珍しいパターンです。
柊一は幸せになれましたので、これまで白川作品に登場してきた兄たちの代表として、一心に幸せを背負って生きて行ってほしいと思います。

一方香澄ですが、本気になったら、かなりたくましい女性だということがわかりました。
柊一が尻に敷かれそうなほどに。

何かと煮え切らない柊一に、ちゃんと自分の意見を言いましたし、ちゃんと自分の気持ちを伝えました。
そして柊一が気が済むまで待つという忍耐強さもあります。
ただ守られているだけでは満足できない女性なんです。
だって、後先を何も考えず、家出した人ですから。

柊一は、家出をするほどの勇気はなかったでしょう。
椿屋敷があったから、安全圏を確保してから家を出たんです。
しかも家族はすぐそばにいるし。

結局のところ、柊一は本当に臆病な人間ということなんでしょう。
安定した確実な何かがないと行動ができないということです。
ちょっと卑怯でもあります。
掴んだものは決して離さない、そういった頑固さもあります。

どうせならもっとわがままに生きたほうがいいように思います。
結局わがままを通すなら。
素直じゃないんです。
でも今後はきっと違います。
香澄がいますから。

香澄には甘えたりわがまま言ったり、時には喧嘩もすることになるのだと思います。

本作は、屋敷がナレーションをするという一風変わった物語でした。
そして、椿という奥深い植物を四季折々楽しむことができました。
ふんわりとしたやさしい気分にさせてくれる物語です。

本当は、もっとさきの二人を見てみたいとも思います。
一緒に温泉にいくとか、子供たちと一緒に椿の世話をするとか。

でももうそれは私たち読者が確認しなくてもきっと大丈夫。
二人はずっと仲良く椿屋敷と一緒に生きていくのだと思います。

さて、弟:檀のほうも兄同様にいざとなるとイジイジして前に進まない感じでしたが、なんとか友人:廣田の助けもあり、1歩を踏み出せました。

檀と絢のラブラブ感も見てみたかったです。
ちょっと残念です。
晶紀は、柊一と香澄が本物の夫婦になっても、実家には帰らず、このまますみれ荘に居座りそうな感じがします。
このまま本当に柊一の友達になってくれたら面白いなと思いました。