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異人館画廊シリーズ⑤⑥⑦『失われた絵と学園の秘密』『透明な絵と堕天使の誘惑』『星灯る夜をきみに捧ぐ』谷瑞恵(著)の感想をお伝えします!

失われた絵と学園の秘密

大人になると自分を失うことが怖くなります。
そうすると、周りにもそして、自分自身に対しても嘘をつくようになります。
自分を守るためです。

そんな透磨ですが、とうとう本音が見え隠れし始めました。

つい言ってしまいます。
言った後、自分が千景にとってどんな存在なのか、認識したのではないでしょうか。
あとは、もう少し毒舌をやめれればいいんでしょうけど。

誰が敵で誰が味方なのか、真実を言っているのは誰なのか、初めのうちは全然わかりませんでした。
でもある程度皆、真実を言っていましたし、学生たちはそれぞれ純粋さを失ってはいなかったんだと思います。
悪いのは純粋な学生たちを利用しようとする大人の方です。

ただ自分の「絵」を描きたいだけなのに、そうさせないのが大人たちの欲望です。
そんな汚い欲望に翻弄される学生たちを、千景は守ろうとしたのかもしれません。

普通の学生生活を送れなかった千景にとっては、ひとときの青春の時間でした。

透磨には入り込めない時間です。
だからこそ、透磨は不安になったのかもしれませんね。
千景が何かに取られてしまうのでは?と。

さて、千景と透磨の関係もさることながら、千景とカゲロウの関係も気になるところです。

透磨はカゲロウがライバルなのであれば、譲ってしまうのかもしれません。
カゲロウは透磨とは違う、千景の理解者であることには間違いがないわけです。

千景にとってどんな存在になっていくのかが楽しみでもあります。

カゲロウは誰にでもなれる、どこにでも溶け込める、そんな不思議な存在です。
どこにいても目立って、どこにいてもやっかまれる千景とは正反対のようにも思えました。

女子高生とその教師、そんな感じに見える二人の表紙です。
バックの学園は普通のようで少し不気味です。
木々が何かを隠しているように見えます。
木々の間から顔をのぞかせるのは美術館でしょうか? 
遠くに見える街から隔離されているようにも見えます。

透明な絵と堕天使の誘惑

今回は千景のことも透磨のことも、色々と分かってきました。
そして期待以上に、千景と透磨が、良かった!

最後には思いがけない人も登場しました。

千景は自分を見つけたんです。
どこに居たのかも、これからどっちに行くのかも、自分が何を望んでいるのかも、ちゃんとわかったんです。

長かったです。
何かにたどり着いて、本巻で、一段落したように感じました。

これまでは過去と向き合う千景のお話でしたが、向き合って乗り越えたんだと思います。

どういう方向に落ち着くのかわからなくて、途中何度もハラハラしました。
ですが、透磨が千景を信じたように、私もどこかで千景を信じてました。

千景自身が自分を信じきれなかっただけだったんです。
もっと早く本当の自分に気づけていれば、これまでの人生も違ったものになっていたのかもしれません。
ですが、結局はこれで良かったのでしょう。

長い年月をかけて、千景は千景を乗り越えてきたんです。
あの頃は、あまりにも幼く、持っているものが足りなくて、全部を引き受けることも、全部を守ることもできなかった。

けれど今はどうでしょう。
大人になったし、自分の武器となる学問も身に付けました。
これでやっと立ち上がることができるし、戦うことだってできるんだと思います。

だから、これからの人生で、自分の持つ本当の力を何と戦うために使うのか、期待が高まります。
今後の千景と図像を巡る戦いが楽しみです。

もちろん、透磨との関係も大いに楽しみです。
過去から解き放たれた二人です。
これまでのような過去に縛られる関係ではなく、もっと別の感情で二人の仲を温めて欲しいと願います。

手をつないでます。
互いを見てます。
これまでの表紙とは明らかに違います。
ぎこちなく、チラチラ見ているような感じではありますが、千景の様子もこれまでとは明らかに違うんです。
中の本編はもっと楽しいです。

星灯る夜をきみに捧ぐ

第一部完結!という帯を見て、ちょっと驚きました。
前巻が一区切りのような終わり方だったので、てっきり本巻から新たなスタートを切るものと思っていました。

が、本巻が一区切りなんですね。

千景と透磨は、どちらも踏み切れない関係ですもんね。

第二部、すごく楽しみです。
透磨にぜひリードして欲しいものです。

透磨はずっと何かの言い訳をしている感じで、いつもいつも煮え切らないのが、ちょっとイラっと来てたんですよね。
大人ぶってるけど大人らしくないし。
もっと積極的になって欲しいと思います。

本巻でも、前巻に比べると少しスケールが小さくなりましたが、事件は起こりました。
もちろん絵を巡っての事件ですし、今まで同様、危険でもありました。

図像術が施された絵というもの自体が、悪意のあるものですし、呪いの絵とも言えるでしょうから、当然、血なまぐさい事件が起こるのは仕方がないのだと思います。

いつも静かに、予想もしないところから、千景に悪意が忍び寄るので、ハラハラするんです。

千景は本当に無防備ですから、透磨の懸念通りです。
そしてここぞという時に透磨を頼らないので、対応が遅れて危険な目にあいます。

透磨は遠くで見守ることにはしたようですけど、もっと近くで見て、対面でコミュニケーションを取らないと、気持ちがすれ違ったままになってしまいます。

事件が解決したあとだけは、対面のコミュニケーションが取れるようですが、事件がないと関係が希薄になってしまうのが心配です。

事件に関係のないデートが見たいものです。

千景と透磨が打ち解けている感じの表紙です。
前巻のラストでは、何となくくっついたような感じでしたし、今後は甘い関係を築いて欲しいなと思います。