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『浄天眼謎とき異聞録』一色美雨季(著)あらすじを含む感想

お仕事小説コンとは

マイナビが、小説投稿サイト「小説家になろう」とコラボして実施している、お仕事小説コンテストのようです。

マイナビが一般の小説を出版していることも、コンテストを開いていたことも全く知らず、たまたま手に取ったこちらの小説が、「第2回お仕事小説コン」グランプリ受賞作品でした。

もともとワカマツカオリ先生のイラストが大好きで、たまたまワカマツ先生がイラストを担当している小説を探していて巡り合った作品でした。


物語の背景

明治・大正時代を描く作品は、とにかく、日本人なら誰しも心惹かれ憧れます。

純日本を残しつつ、どこか異国風の建物や衣服が混ざり合い、変なようでいて変ではなく、むしろ文化が融合していく時間を楽しむかのような雰囲気を感じます。

時は明治時代。

探偵役は「浄天眼」という不思議な能力を持つ小説家:燕石という男性です。
助手役は由之助という十代の青年です。
そして燕石の世話をするのが千代という美しい女中です。
この3人が巻き込まれていく事件を紐解いていくお話のようです。

ここで余談ですが、「浄天眼謎とき異聞録 下」巻のあとがきによると、もともと本作は江戸時代のお話だったようなんです。

ですが、明治時代のほうがむしろ素敵な感じがしますし、個人的には明治で良かったと思います。


浄天眼謎とき異聞録 上 ~明治つれづれ推理

燕石の幼馴染で警部補の相良という男性が登場するのですが、相良の計らいで、由之助は燕石の助手兼世話役という住み込みの仕事に就くことになります。

下巻の最後まで読むとわかるのですが、これにもちゃんとした意味がありました。
由之助と燕石は、思わぬところで深い縁があったんです。
二人は同じモノを想い、愛し、見守っていたんです。今までもこれからもずっと。

さて最初のお話は、燕石が浄天眼を使って事件を紐解く姿を、由之助が初めて目にするというものです。

浄天眼は千里眼のような能力で、傍目には便利な能力のようにも見えますが、そこには燕石の並々ならぬ苦労があったんです。

命を落とした、美しくうら若き女性の死にざまを、目にするということがどれほどの苦痛を伴うのか、想像するだけでも恐ろしいものです。

次のお話は燕石の妹:翠子が登場します。
そして由之助の許嫁であり妹のような存在でもある小梅も登場します。

後々わかるのですが、同じタイミングで登場するこの二人の少女。
二人の身に降りかかる火の粉を兄たちが振り払っていくんです。

そういえば、翠子が気になることを言っていました。
「誰かに見られているような気がする」と。
これはたぶん、気のせいではないように思います。

次のお話は、千代と燕石の関係に触れる場面がありますので、とても重要なお話でした。
色んな偶然が重なり合うと、それはもう必然であり運命なのかもしれません。

最後のお話は、次の巻へと続く序章です。
燕石と由之助の家族が抱えてきた過去があらわとなり、大きく翻弄されて行きます。



浄天眼謎とき異聞録 下 ~明治つれづれ推理

上巻がとても意味深な終わり方をしてましたので、一体どういうわけで小梅が狙われているのかと、気が気ではありませんでした。


意外なことに、燕石と由之助には、出会う前からの因縁があったわけです。

もちろん燕石は知っていたんですけどね、知っていて由之助を自分の身近においていたわけです。

不幸な生い立ちを持ってしまった子らを、優しい大人たちが、ずっと大切に守ってきたというわけです。

ところで、燕石と千代の関係にも今回は進展がありました。
どんどんこじれていく二人の関係も、やっとのことで修復に向かうようです。
良かったと一安心です。

ですが、燕石のことなので、なんだかのんびりしてしまいそうなんですよね。

千代はもうこの時代においては、行き遅れ的な歳になってしまうのではないかと思いますし、とっとと先に進んでいってほしいものです。

今回は、最初のお話以外は、危険なこともなく登場人物それぞれの問題が浮き彫りになったり、登場人物の家族や家族同然の人も登場したりと、設定的なお話が多かったように思います。

最後のお話はなんと、由之助の出生にまつわるお話でした。

由之助の兄夫婦が、由之助と小梅を外に出そうとしなかった理由が、ようやくはっきりとわかってしまったということです。

自由に恋愛ができなかった時代の、抑圧された感情が、人を追い込んで鬼を作ってしまう。
いつの時代も恋とは激しく求めてしまう感情なのだなと思いました。

そうであっても、子供達にはなんの罪もありませんから、誰かが犠牲になったと考えるのは間違っていますよね。

そんな経験も糧として由之助はまた一段と大きく、大人の男性に成長を遂げたのではないのかなと思いました。



浄天眼謎とき異聞録 ~双子真珠と麗人の髪飾り~

最初のお話から幸せな報告が聞けましたね。

何だかんだと、のらりくらりと、くっつくようなくっつかないような関係のまま、行ってしまうのではないかと心配していましたが、大丈夫だったようです。

男女の仲は一度すれ違うと、難しいものなのでしょうが、やはりそこはそれ、どうにかはなるものだし、納まるべき鞘に納まるということなのでしょう。

代わりに、わりとうまく言っていた関係に、少々ヒビが入ったような感じの二人がいましたが、そっちはまだまだおこちゃまですから、今後大人になるための通過儀礼的な試練ということで、これから頑張ってもらうしかない感じですよね。

次のお話は千代の弟が登場します。
千代そっくりの美しい少年です。

本人のあずかり知らぬところで、事件が起こって、勝手に巻き込まれて苦労する。
今後も波乱万丈な人生を送りそうな予感がします。

次のお話は、3人での友情は成り立たないという例えがいくつか出てくるお話でした。

確かに本作は、登場人物たちが、3人で組んで行動しているような気がします。
色んなパターンの3人組です。

特に女性1人に、男性2人のパターンが多いような感じもしますが、このパターンだと恋愛の三角関係にも発展するので、案外難しい付き合いになりますよね。


そして次のお話は、一人であぶれてしまった相良が、作者の力によってどうにかなりそうな兆しを見せるお話です。

まあ相手は、本人の知らぬ間にやっかいな家族関係や三角関係を持ってしまっている女性なんで、前途多難なんですが、きっと相良も幸せになれるはずです。

最後のお話は、燕石のおばあさんが登場します。

浄天眼がどのようにして燕石の人生に影響を与えたのか、その始まりのお話でした。

思えば本巻全体を通じて、由之助があまり見えなかったような感じもします。
おまけ程度に、なんだか無理やり登場したような、しないような。。

続編があるのであれば、次は燕石と由之助のコンビで活躍して欲しいと思いました。



ChatGPTに聞いてみました

ChatGPTに本作のPRや、あらすじ紹介、感想などを訊いてみました。
そのまま書くと、意味が通じない部分のある文章なので、要約してみました。

この小説は、明治時代の日本を舞台に、異聞と推理が交錯する独創的な物語です。
主人公の青年は、浄天眼という超自然な力を持ち、未解決の謎を解明することに情熱を燃やす若き探偵です
彼は、明治時代に起こる奇怪な事件と超自然な現象に立ち向かい、謎解きの冒険に挑みます。
主人公の謎解きの才能を始め、他にも魅力的なキャラクターたちが読者を引き込んで行きます。
そして、一筋縄ではいかない難事件と、歴史と、超自然という要素が見事に組み合わさっていきます。
複雑で魅力的なプロットとキャラクターたちの葛藤が、一気に物語を進展させ、読者を魅了します。

とのことです。皆さんはどう思いますか?
「情熱を燃やす若き探偵」という部分が、少しズレた見方のような気がします。事件はもちろん解決したいけど、浄天眼はあまり使いたくはないような気がするんですよね。