kei-bookcolorの文庫日和

文庫の良さを一緒に味わいましょう!

『ランチ探偵』水生大海(著)の感想をお伝えします!

山本美月さん主演でドラマ化された作品です

2020年にテレビドラマ化された作品です。
知っている方も多いかと思いますが、ドラマと原作は、雰囲気が少々違います。

山本美月さんが演じた天野ゆいかは、影のある女性です。
ちょっとした秘密や事情を抱えていました。

一方、原作の主人公:天野ゆいかは、いたって普通のOLです。
確かに、少し癖のある人間ではありますが、一般の大人の女性です。

ドラマはドラマ、原作は原作で、それぞれの良さがあり、それぞれの面白さがありました。

どちらも知らないという方は、ぜひ、原作から読んでみることをお勧めします。

 

ランチ探偵

安楽椅子探偵の華麗な推理を味わえる作品です。
推理の前に、ランチがとにかくおいしそうです。
描写から料理のようすが目に浮かびます。

会社では普段、お弁当を買ってきて、社内で食べる派の私ですが、原作を読んだ直後は、ついつられて、ランチ外食を数回やってしまいました。
痛い出費です。
ランチ合コンはハードルが高くて無理なんですが、、小説に影響されやすい自分に驚きました。

それにしても、ランチタイムに有給を使って2時間出かけるというのは、なかなか勇気のいる行動です。
私などは周りに気を使ってしまって、とても出来ません。
しかも同じ部署の女子2名が同時にです。
上司に怒られそうな気がします。

しかし、そこは小説の中ということで、案外都合の良い設定があるものだなと感心してしまいました。
女子に有利な合コンスタイルですよね。

ライトミステリーで、身近にある些細な出来事を題材に推理を繰り広げますが、侮れない展開ばかりです。
毎話おなかいっぱいで満足です。
特にデザートのアクセントはたまりません。

相手に騙されている場合にはすっぱい真実を明らかにし、
相手の事情に気づけていない人には事情を伝え、
思い込みの激しい人はバッサリ一刀両断、
誤解したまま恋を諦めようとしている人を応援し、
小さな子供が訴える声に耳を傾け、
同時に本当に誠意のある人というのはどういう人なのかに気づかせてくれる。

そんなお話が詰まった一冊でした。



ランチ探偵 容疑者のレシピ

1冊目同様のスタイルを踏襲しつつ、ちょっともじって来たなという感じです。
ランチタイムを離れた展開もあります。

1冊目に出てきた人物も再登場していて、人生が順調なことがうかがえます。
麗子が、ゆいかの目となり耳となり、しまいには声となって大活躍です。

いちおコンセプトは合コンですが、なんだか毎回、合コン相手の恋路を応援する展開に発展する結果となっているので、麗子が幸せになる日が来ないような気もします。

麗子が幸せになってしまったら合コンがなくなってしまうので仕方がないのでしょうか。

今回もまたおいしそうなランチが登場します。

人を疑いたくない、できれば信じていたい、もしくは知りたくない真実は知らなくてもいいと思う人がいます。
一方では、犯人を決め付けようとする、または特定しなければ気がすまないと思う人もいます。

どっちがいいかの線引きは、難しいところです。

疑わず犯人を特定しないほうが、幸せなことも多いでしょうが、特定しないことで疑心暗鬼になり、信頼関係が壊れるのであれば、明らかにしないわけにもいきません。

どちらが正しかったのかは時間が経過しないとわかりませんしね。
後悔しない選択をして生きていきたいものです。

もし選択を間違えてしまった場合は、自分が次にどんな行動を取れるのか、何もしないで諦めやり過ごすのか、それもまた重要な選択になるんでしょう。



ランチ探偵 彼女は謎に恋をする

本巻は、現在の世相を反映させながらも、ランチに合コンと推理をするスタンスを変えない。
ある意味、貫いている作品でした。

夜に推理するお話もありましたけどね。

コロナ化において、起こるべくして起こったトラブル解決に、ゆいかが挑んでいく姿は、相変わらず圧巻です。
そして、コロナ化においてもめげずに、合コンを計画する麗子のたくましさも健在です。

悪いことばかりで終わらせたくない!
という感覚が麗子の中にあるのかもしれません。

人に会えないから会いたくなる。
ジレンマも感じました。

また、ゆいかのこもるスタイルにも共感できます。
真逆のスタイルを貫く二人は、現在の状況を如実に表現していていますし、本当にありきたりな日常を描いているのだなと思いました。

でも面白い。

そんな日常のささやかな謎が面白い。
コロナ化ならではのトラブルとコロナ化ならではの解決法を見たようにも思います。

どんな時代であっても、人は一人では生きられないのです。
会えなくてもどこかでつながっているわけなんです。
そして、会えないからこそ、身近な人との関係を深めようとも思うわけなんです。