kei-bookcolorの文庫日和

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『夢探偵フロイト』内藤了(著)の感想と、自分の中の「夢」についてお伝えしたいと思います!

私の夢

「夢」。人は寝ていても夢を見ますし、起きていても見るモノです。

思えば不思議です。
何故、睡眠中に見る夢と、現実に見る夢が同じ字なのか?
人の夢は儚いとも書きますし、つまり、夢というものは、叶わないから夢なのだという解釈もできるのかもしれません。

私には子供の頃から、何度か見続けている夢があります。
寝ている時の方の夢です。
でも私の場合は、同じ夢を繰り返し見ているのではなく、夢の中のストーリーは、毎回、その続きから始まるんです。

そして毎回、誰かが亡くなります。
事件なのか、事故なのか、病気なのか、原因は思い出せません。

いつかは自分が死ぬ番になるのではないか?
と、夢の中でおびえる自分を感じる瞬間があります。

そう思うと、夢の中で、これは夢なんだと思い始め、覚醒に向かうようです。
見るのは不定期で、何年かおきに見ていますが、忘れた頃に、またこの夢に出会うんです。
いつか私もこの夢の正体を知る日が来るんでしょうか。
知りたいような知りたくないような、複雑な気持ちではあります。

 

夢探偵フロイト マッド・モラン連続死事件

本作の「夢探偵」という響きに惹かれて、思わず手に取ってしまいました。
副題には「連続死」という表現もありますし、人の死と夢がどんなふうに関わっているのか、ものすごく気になりました。
夢が現実に影響するのだとしたら、それはいったいどういうことなのか?
興味がわきました。

本作で登場する夢科学研究所には3人の研究員がいます。
個性豊かで、奇抜なキャラクター達です。

フロイト教授は何となくイケメンのイメージですし、ヲタ森は、ヒョロヒョロしたオタクで毒舌。
あかねは、頭の色がぶっ飛んでる感じです。

そんな3人が、他人の夢の中に立ち入り、その夢から1歩1歩、真実に迫っていきます。

夢は人を悩まし、時に傷つけます。
ですが、人に希望を与えるモノでもあるんです。
それを証明して欲しいと、個人的には願います。

よく言いますよね。
人にとって一番大切なものは、希望だと。
夢は失っても希望があれば大丈夫だと。

でも、よくよく考えてみると、まず、夢を持てなければ、希望を持つこともできないような気がするんです。

うまく言えないんですが、、
何かを発想し夢を見るからこそ、実現できるという希望に繋がるのではないかという感じです。

とにかく、夢科学研究、それは人を救う研究だと信じたいものです。



夢探偵フロイト てるてる坊主殺人事件

ただ純粋に夢を探求するだけの学問だったはずなのに、思いもよらぬ方向から事件が降ってわいてくる。
しかも、わりと身近に危険は潜んでいる。

初めに起こった殺人事件が、いったいどんな風にフロイトたちに関わってくるのか、最後の50ページを切るまで、全くわかりませんでした。

今回は、本当の意味で危険が待っている予感があったので、後半はずっと心配でハラハラしながら読んでいたような感覚があります。

今回のあかねは、とある会社令嬢から、意地悪される役回りでした。
ちょうどタイムリーに、私も会社で、いわれのない八つ当たりを同僚から受け、ちょっとやさぐれた気分だったので、自分とあかねが重なって見えました。

でもそう、ここは一つ大人にならないといけません。
やられたからって、やり返すわけにも行きません。

やさしいあかねは、だいぶ傷ついているようでした。
私も傷つきました。
相手に良かれと、勝手に気を使って、勝手にやってきたことが全部、間違いだったかのような気分にもなりました。

もう何もしない方が傷つくこともない。
関係も壊れない。
それが一番平和なんではないか?とさえ思いました。

でも小説やドラマでは、そうはならないんですよね。
たぶんドラマなんかでは、二人は分かり合い、仲直りするという展開に発展することでしょう。

現実では、なかなかちょっと難しいものです。
うまく仲直りしたくてもいざ相手を前にすると、勇気がでないものです。

土日はゆっくり休んで、いったん忘れて、また来週、もうひと踏ん張り、頑張ろうと思いました。

本巻では、何年もの間、繰り返し行われてきた連続殺人も、フロイトたちの手によって無事解決を見ることができました。

ただの夢の研究から、どうしてこうもくっきり行くべき方向に進めるのか、不思議です。
たぶん3人のうち1人でも欠けたら、事件は解決しなかったはず。

絶妙に全く違うタイプの3人が集まったから、それぞれの思考と行動によって、突拍子もない方向に進むのかもしれませんね。



夢探偵フロイト 邪神が売る殺意

あかねって案外、トラブルメーカー?なんです。
今まで良く無事に生きてこられたもんだと、不思議な気がしてきました。

ネット通販は、つい手軽にやってしまえる時代が来ました。
普通は別に、何ということもない買い物なんです。

ですが、これは推理小説。

ただのあり触れた買い物1つ取っても、怪しく思えてきます。
怪しいものを買おうとした瞬間から、これは危険だ!と、読者に思わせる何かが潜んでいたように思います。

どことなくあかねのことが心配で、心配しながら読み進む自分がいました。
全然、解決に向かう感じがしないのに、残りのページ数はどんどん減っていくし、これって未解決に終わったりしないよね?と、途中から心配になりながら読んでいました。

ですが、ちゃんと解決します。
最後の方は危機感満載でしたし、怒涛の展開でもありました。
相変わらず、どうなるのか全く予想できませんでしたが、何とかピンチを逃れ、解決を見るようです。

それでも、本当のピンチは、この後やってくるんではないかな?とも思われます。
あかねの将来が心配ですが、何となく、あかねの将来が見えてきたような感じもしました。

ところで、ヲタ森は、結構、あかねを気に入っているような気がしてきました。
何だかんだ言っても、結局、あかねをかばっているような時が、毎巻ときたま、あるんです。
意地悪を言うようで、やさしいこともある。
無理難題を押し付けないし、たまに良いこと言うと思う瞬間もある。

もう一方のフロイトは優しいけど、どことなく壁があって、本当の意味では誰も近づけない気がします。

距離感で言うと、ヲタ森とあかねは、だんだん近づいているような感じもするんです。
微妙な3人の関係とバランスが、均衡を保っているようなものなので、恋愛とかには発展しなさそうで残念ではありますが、このままの関係が続くのも心地よいのかなと思います。



夢探偵フロイト アイスクリーム溺死事件

何だか新しい仲間が増えたような気がします。
それから、ヲタ森とあかねの距離が縮まったような感じもします。

少なくとも、あかねがヲタ森を意識しているのは確かです。

さて、今回も何故か人の死に絡んだ悪夢を追うことになった夢科学研究所。
トラブルメーカーのあかねが動くと、どうしても心配になってしまいます。

元来、筋金入りのお人よしであるあかねは、人を疑うことを知りません。
あかねの呑気な生き方、平和な日常は、ある種の人間からすると、うらやましくもあり、妬ましくもあるのでしょう。

だからそれは、誰からも恨まれないようで、時にひどく恨みを買ってしまう所以になるんでしょう。
損な性格なのか得した人生なのか、図りかねますが、本人はいたって前向きに生きているようです。

敵に塩を贈ってしまうあかねには、いつも感心してしまいます。
私も、そんな風におおらかになれたらいいのにと思ってしまうからです。

本巻を読んで感じたのは、ヲタ森とあかねが目立ってしまってして、フロイトの出番が少なかったことです。
重要なところで登場して、最後を締めてはいますが、なんとなくベンチにいる監督のような感じがしてしまいました。

それにしてもヲタ森は、結構いい仕事をします。
そして、巻を追うごとに、あかねにやさしくなって来るような気もします。

人見知り気質が、あかねにだけ緩んできた結果なのかもしれませんが、なんとなくヲタ森の成長過程をも見ているような感じがするんです。
もちろん、あかねもだんだん大人になってきたなと思います。

やっぱり、二人の創造性をうまく引き出せているフロイトがすごいってことになるのかもしれませんね。



夢探偵フロイト ナイトメアの殺人実験

あかねは単位を補填し、大学を卒業するために、夢科学研究所に入ったわけなんですが。
夢科学研究の救世主でもあったんですね。
発想が豊かで、人と違う視点を持っているあかねが、これまでも事件を呼び寄せ、解決の糸口をフロイトに提供し、ヲタ森が分析して、フロイトが推理する。

絶妙な3人の連携が、この研究所を支えてきたわけです。
頭の良いフロイトとヲタ森だけでは、ここまで来れなかったんだと思うんです。

もっと単純に素直な人間が欠けていた。
それがあかねだったんです。
打算も計算もせず、素直に生きている、ただ目の前にあるものを享受する。

それをただのアホと捉えるか、取柄と捉えるか。
絶妙なタイミングでそのアホみたいな発想を展開するあかねは、やはりある意味天才なのかもしれません。

そもそも夢なんてものを追いかけるんですから、発想の転換ができる人間も必要だったんです。

フロイトが追い求めてきた夢が、とうとうやってきました。
そして、あかねの卒業も迫ってきました。
おまけ程度にヲタ森の明るい進路も確保されたようです。

フロイトとあかねとヲタ森が、それぞれの卒業や転機を迎えたということです。
最終的には、夢科学研究所が新たな次元へと進化し、新たな方向へと旅立ったんだなと思いました。