kei-bookcolorの文庫日和

文庫の良さを一緒に味わいましょう!

『公爵夫人は銀灯師』『雪侯爵の銀灯師』白川紺子(著) の感想をお伝えします!

『雪侯爵の銀灯師』のあとがきを少しご紹介します。

雪の結晶・月・夜・宿り木と、白川先生の好きなものがつまったお話を描いたとのことです。
特に雪の結晶については、結晶の写真集や雪にまつわる本など、昔から集めているとのことです。

実は私も、水の結晶・雪の結晶の図鑑を1度だけ目にした経験があります。
それは感動的に美しいものでした。
どこかのヒーリングショップだったように記憶しています。
その時聞いた話なんですが、、
コップの中に水を注いで、水に向かってたくさんの美しい言葉をかけます。
すると、水の中の結晶が、どんどんきめ細やかに美しく変化していくのだそうです。
もちろん、水の中の結晶なので、顕微鏡で見ない限り、実際には確かめることはできません。
ですが美しい結晶の水を飲むと、心も体も清らかになるという話でした。

逆に、マイナスイメージの言葉を水にかけると、結晶が壊れていくんだそうです。
おそらく結晶が壊れた水は、体には良くないだろうとのことでした。

ここからは、私の勝手な想像ですが、、

よく、ストレスがたまると太ると言います。
ストレスで暴飲暴食をしてしまうとか、活性酸素がでるとか、
色々な理由があると思います。

ストレスがたまると、どうしても、マイナスな考え方になったり、愚痴っぽくなったり、ため息ばかりつくようになります。

人間の体内の水分量は、50%~60%くらいだとか言われていますよね。
マイナスな考えや言葉が、自分の中の水の結晶を壊している可能性があるのではないかと考えました。

つまり太ったり、病気になったりするのは、自分の水の結晶が壊れてしまっている可能性もあるのではないのかなと考えました。

ストレスは、どうしてもたまって行ってしまうものですが、そんな時こそ、美しい言葉や音楽を聴くことが大事なのかもしれません。

日々、自分に向かって素敵な言葉をかけてあげることが必要ですし、周りの友人や家族にも、温かい言葉を常にかけてあげることが、自分の中と、周りの人たちの結晶を美しく保つコツなのではないかなと思います。


おしどり夫婦の愛は王宮を救う? 公爵夫人は銀灯師

表紙から高貴な雰囲気を感じます。
奥様は無表情で、旦那様はわずかに口元に笑みを浮かべている。
奥様はどこか遠くを見ているのに、旦那様は奥様しか見ていない。
夫婦の力関係が伝わってくる表紙だと思いました。

相思相愛の夫婦が主人公なので、最初っからずっとべたべたしている感じでした。
でも、そのおしどりぶりに、キュンときます。

旦那様は奥様のためなら、どこまでも冷徹になれるという紳士です。

旦那様の望みは、奥様を自由に生きたいようにさせてあげることです。
そのためなら、なんでもするのでしょう。

ですが、肝心なのは、自分の囲ったテリトリーの中からは、決して、奥様を外には出さないようにもしているということです。

矛盾しているようにも感じますが、旦那様のテリトリーに囲われているという安心感は、すなわち、女性としての幸せを味わうことでもあるわけです。

だから、互いのわがままを通すために、一緒にいるという見方もできます。
互いに縛りあうことで、幸せも掴んでいるということなんでしょうか。

そう言えば、二人のラブラブの陰で、国王の王妃様探しが行われていました。
ちなみにこの国王は、奥様の異母兄です。

国王とちょっといい感じになりそうな雰囲気の女性がいたんですが、たぶん、国王は振られてしまったようなんです。

でも、何となく、時間をかければ、そのうちどうにかなるんじゃないのかな?
という予感を感じる関係でもありました。

白川作品に登場する兄は、毎度毎度、苦労ばかりさせられて、妹や弟が幸せになる姿を横目にみながら、自身は幸せを味えず、幕を閉じます。
たまにはそんな兄の幸せも、見てみたいものです。

最後に、やはり本作も『後宮の烏』につながっていくような気配を感じました。
籠の鳥、箱庭、夜、目の中の何か、そういったちょっとしたピースが、見え隠れしていて、『後宮の烏』と共通するキーワードのような感じがしました。


雪侯爵の銀灯師 みせかけ夫婦と王宮の庭


雪の国で、ほんのりと暖かい部屋の中で、二人が気持ちを確かめ合っている。
そんな雰囲気を感じる表紙です。
燃えるような情熱的なものではなく、ゆっくりと優しい時間を過ごしながら、気持ちをはぐくんでいる。
おだやかな二人の様子が感じられます。

銀灯師、その響きも儚い感じですし、神秘的な感じもします。

辺境の地に追いやられた侯爵:ヴィクトルと、孤児の銀灯師:エミリアは、雪に閉ざされた侯爵領で出会い、互いにひっそり穏やかに、愛を育んで来ました。

間違いなく両想いなんですが、互いの身分と身の上が障害となり、気持ちを隠して大人になりました。

そんな二人が契約結婚をするところから物語は動き始めます

ヴィクトルの事情で契約結婚することになったんですが、その事情をヴィクトルが利用したとも言えます。
こうでもしないと、エミリアとの仲は全く進展しません。

本作では、エミリアは孤児なので兄はいません。
ですが、ヴィクトルには兄がいます。

『公爵夫人は銀灯師』に登場した国王です。
つまり、本作は時間軸的には、『公爵夫人は銀灯師』の少し後になるようなんです。

『公爵夫人は銀灯師』で、王妃を選び損ねてしまった国王ですが、今のところまだ、独身のようです。

今回、ヴィクトルに結婚するよう命令したのは、兄:国王なんですが、たぶん純粋に、ヴィクトルの身を案じてのことだったのではないでしょうか。

忌み嫌っているのだとしたら、いわくつきの弟が結婚して子孫を残すことを禁じるはずだと思うからです。

やっぱり兄が妹弟を守るのが白川作品の見どころですしね。

ヴィクトルとエミリアには、二人の邪魔をする存在もいませんし、あとは気持ちがすれ違うことによって、二人が互いに距離を作らなければいいだけなんですが、その辺は物語なので、途中、関係がギクシャクします。

そういったものを乗り越えて、二人が結ばれる瞬間を楽しみました。

本作は、巻末に短編集が2本収録されています。

1本目では、ヴィクトルとエミリアのその後が語られています。

2本目の王宮の番人:アロイスのお話は、短いのですが、ほろっと涙がでました。
最後に、心の底にじんわりとした何かが灯るような感覚になりました。