kei-bookcolorの文庫日和

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『動機探偵』『動機探偵 名村詩朗の洞察』喜多喜久(著)の感想を書きました!

准教授って何?

推理小説に登場する探偵役の肩書が、教授ではなく「准教授」になっている作品が、結構多いような気がします。

たまたま私が読んでいるものが、たまたま准教授なだけの可能性もありますが、、個人的には教授より、准教授の方が、響きがいいような気がしています。

教授だと、それなりの年齢を重ねなければなりませんが、准教授であれば、若き天才博士でもつくことが可能な役職ということになるのかもしれませんし、単純に教授より准教授のほうが忙しくないので、事件に巻き込まれても大丈夫ということなのかもしれません。

ところで、私が子供の頃は、准教授なんて名称の役職は聞いたことがありませんでした。
准教授って、言われてみると、どういう教授なのだろう?と急に悩みだしたんです。
知っているつもりで、実は知らないことに気付きました。

調べてみると、大学の役職は下記になるようです。
教授→准教授→講師→助教
あれ?助教授がないと、気づきました。

何となくイメージとして、下記のように思っていたんです。
教授→准教授→助教授→講師→助教
「准」は準ずるという意味ですよね。
たとえば教授の人数は学部が増えない限り、増やすにも限界があるかと思います。
ところが、助教や講師の中に、ものすごく優秀な人がいて、何かすごい賞とか取ってしまったとします。
だから出世させないわけにもいかないってことになります。
でも教授に空きがない。
上はまだまだ定年まで何年もある。
さてどうしよう?
となった時のための役職としてできたのが准教授なのかな?とか、勝手に勘違いしていました。
准教授であれば、教授とは別の研究室を統括してそうに見えたので。
教授に準ずる=教授と同等の役職というものなのかなと思っていました。
全部、大きな間違いでした。

調べてみると、「学校教育法」や「大学設置基準」が改正されたことにより、2007年4月から助教授が准教授に変更になったようです。

助教授という呼び方は、教授を助ける(教授の助手)というニュアンスが強かったようです。
名称を改めると同時に「独立した教育・研究者である」という役割の明確化もなされたものと思われます。

昔のドラマに出てくる助教授は、教授の腰巾着で、教授の許可なく研究したり行動したりすることが、無理そうなイメージがありました。
助教授の成果は教授のものみたいなイメージでした。

実際は違ったのかもしれませんが、
ドラマのイメージが先行すると、助教授の地位や評価が、世間からは低く見られてしまうということもあったのかもしれません。

結局のところ、准教授の上司が教授であることには、変わりはないのでしょうけど、研究者としては、教授と肩を並べてもよい存在というイメージに、ちょっとだけ変更されたような気がします。

いずれも私の勝手なイメージに過ぎないのかもしれませんけどね。

動機探偵

事件はすでに起こっていて、その事件の背景に存在するその動機を調査するのが本作のテーマとなっています。
ある意味においては、事件そのものの解決も行われますが、それはあくまで2次的な問題となります。

追い求めるのは、人の奥底に眠る深層心理と、その葛藤です。
それらを知ることは、予測不能な人の行動を分析し、解析するということに繋がるのでしょう。

つまり、人というものの行動原理を解き明かしていくお話ということになるのだと思います。

主人公:若葉はいたって普通の女性です。
おそらく、容姿も体系も十人波なのだろうと予測します。
人当たりもよく、常識も備わっていて、どのコミュニティにも溶け込むことができそうです。

ですが、名村准教授が出した命題に見事パスをしてしまう、数千人に一人の貴重な逸材でもあります。
非論理的な人の行動の謎を追うのにふさわしい女性です。

一方、パートナー役の名村は、感情が欠落しているという欠陥を持つ、こちらも一風変わったキャラクターとなります。
喜怒哀楽や好き嫌いといった感情自体が、欠落しているというものなのでしょう。

そんな名村は、名村だからこそふさわしいと思われる職業についています。
人工知能を進化させ、発展させることが、仕事であり、ライフワークです。
文字通り、仕事漬け人間なんです。
趣味と実益を兼ねた人生を送っているということになるのでしょう。

今のところ2人が、色恋沙汰に発展するような要素はありませんが、男女のパートナーなので、多少は恋愛要素も出てきて欲しいなと個人的には思います。
が、そうなると若葉が辛い思いをすることになるのでしょう。

最初のお話は、若菜の祖母が残した謎を追うというものでした。
祖母の結婚前の淡い恋心を知るという素敵なお話でした。

次の山で事故にあって亡くなった青年の謎は、少し切ない結末が待っていました。

そして3話目と4話目のお話ですが、類は友を呼ぶとでも言いましょうか。
なかなか出会わないタイプの人間が登場しますし、名村でないと解決できない問題を抱えている人たちのお話でした。

非論理的な行動というのは、やはり、普通の人には当てはならないモノなのだと思いました。
普通の人は必ず理由があって、行動を起こすものだからです。
普通の人に理解できない謎が非論理的な思考ということなのでしょう。
なかなかに着眼点のよい作品だと思います。

動機探偵 名村詩朗の洞察

名村の友人が現れます。
名村にも友達というものがいたようです。
ちょっとだけホッとしました。
ただ、若葉にとっては、ちょっと厄介な存在になりそうな男性なんで、逆に、若菜と名村の関係をより複雑なものにしそうな予感もあります。

本巻では、名村のことがもう少しだけ理解できたような感じがありました。
喜怒哀楽=感情というものが全くないという名村ですが、場合によっては、心を動かされる衝動のようなものがあるように思うんです。
たぶん若葉も気づいています。

興味のあることがうまく行くと、名村は確実に、喜んでいる?と感じる瞬間があるんです。

そもそもAIの進化という命題に取り組んでいる名村ですが、これだって、名村の心を突き動かすだけの魅力があったから、研究を続けているわけですしね。

いつか、若菜と一緒に、感情というものをその身に感じる瞬間が来ると信じてみたい気分になりました。

さて最初のお話は、とあるゲームプレイヤーが突然消息を絶ってしまうという謎でした。
何となく予想できたんですが、やはり悲しい結末となりました。

次は両親の離婚理由がわからないという女子大生のお話でした。
両親のどちらもすでに亡くなっていましたが、何とか真相にたどり着きます。
ただ、両親の真意までは想像するしかできません。
真相と本人たちの真意は違うものだったのではないか?とも思います。
依頼者の女子大生には、この真実を受け止めて、別の幸せを見つけて欲しいと願います。

次は記憶喪失の男性が登場します。
記憶をなくしている理由を突き止めることで、ある意味、この男性を救うことにつながります。
若菜と名村の行動が、一人の男性を救うことにつながりました。

最後は、自殺した人気俳優の自殺理由を調査するお話です。
ライトミステリーなのに、殺人事件が起こったのか?とヒヤヒヤしましたが、自殺は自殺のままで、いちおの解決は得られます。

心の奥底にある、それぞれの人が持つ真意は、誰にもわからないものなのかもしれません。
それはAIに学習させる以前の問題です。
人と人が分かり合うことの難しさを改めて思い知ることになりました。