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『猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』内藤了(著)シリーズ『サークル 猟奇犯罪捜査官・厚田巌夫(11巻)』『BURN 上(12巻)』『BURN 下(13巻)』の感想⑤

サークル 猟奇犯罪捜査官・厚田巌夫 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子

ガンさんと女史のお話でした。
予想通りスピンオフ作品です。

ガンさんがカッコ良すぎて、惚れちゃいそうです。
なんでこんな素敵なガンさんと、分かれちゃったんですかね、女史は。
もったいない。

女史を幸せにしてくれる唯一の存在だと思うんです。
でも、結婚とか肌のぬくもりとか、そういうものから幸せを感じるわけではないという人も、いるのだということなんでしょうか。

ガンさんは間違いなく、女史が人生で一番苦しい時に傍にいて、女史を支えた唯一の人なんです。

そして女史を検視官にしてくれた人でもあるんです。

一緒に過ごした時間は短かったのかもしれませんが、女史の中にガンさんという存在が根付いたはずです。

互いに生涯で一番苦しくて、一番輝いた時間だったのだと思います。

女史が検視官を辞めて家庭に入ってしまったら、現代の比奈子たちももっと違った形になってしまったでしょうし、今にして思えばこれで良かったのでしょう。

実は、179ページにとても素敵な名言がありました。
名言によると、地球は丸いので、喧嘩して互いに遠くへ逃げれば逃げるほど、二人の距離は、また近づいていくということになるようです。

素敵なエピソードですので、お見逃しなく。

さて、警察官一家の殺人事件についてです。
お蔵入りになったのは、もちろん現在の比奈子たちの話から知っています。
ある意味、ここからすべてが始まったのだと思うんです。

この事件のために、ガンさんと女史は、夫婦であることを諦めたと言ってもよさそうな感じがします。
二人の将来の岐路となる事件でもありました。

現在の比奈子たちに繋がるヒントが散りばめられているお話でもありました。
だから最終章を読む前に、読んでおいて良かったとも思います。

何もかも終わったのちに、ガンさんと女史が復縁する未来が待っていると、信じられるお話でもありました。

 

BURN 上 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子

物語も、いよいよ大詰めかと思うと、捜査班のメンバーが全員狙われているようにも思えてきて、最初からハラハラしながら読んでいる自分がいました。

頼むから、一人にならないで、最低2人で行動してねと、心の中で唱えながら読んでいたような気がします。

でもまあ、どこに居たって安全とは限らないんですよね。
敵はどこにでも侵入できそうな感じですし、一瞬で何人もの人間を殺傷できる腕をお持ちみたいですしね。

狙われたら最後のような気もします。

それでも皆が無事で、事件解決後は幸せになって欲しいなって思ってしまうんです。
無傷で終われるはずがないと、頭の中ではわかっているんですが、どうしても願ってしまうんです。

特にガンさんと女史をね。。

さて、一番危険な永久君ですが、一番冷静で、一番頭がいいような気がします。
敵は、自分のクローンである永久君が、自分の思い通りになると思っているのでしょうけど、そう、一筋縄ではいかないんじゃないかなと思います。

クローンとは言えど、生まれも育ちも違うわけですし、何よりも保と比奈子に出会ってしまったわけですから、思わぬ思考で、思わぬ行動を示すのかもしれません。

永久君自身が波乱を巻き起こしそうな気もします。
ただ黙って守られているばかりの少年ではないですからね。
考えて行動するはずです。

それが思わぬ誤算になることに期待したいと思います。

そして東海林です。
東海林がだんだんいい男に見えてくるから不思議です。
最終的に比奈子を守れるのは東海林なのかもしれないと、思えてきました。

家族のようなお兄ちゃんのような存在です。
たぶんじわじわと比奈子のなかにその存在が入り込んで行っているのではないかとも思うんです。

東海林頼んだぞ!頑張れ!と、気が付けば東海林を応援している自分がいました。

 

BURN 下 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子

東海林が最後に良い働きをしました。
よし!良くやった!と思わず呟いてしまいました。

物語の初めは、非常識なお調子者というイメージしかなかった東海林ですが、ここにきて、何だか、一番の常識人だったような気もしてきました。

それもこれもガンさんの元で着実に成長した刑事だからということになるのでしょう。
ただのでくの坊では終わらなかったようです。

倉島も思えば大いに活躍したようにも思われます。
ですが、印象が薄いんですよね、残念。

面白かったのは御子柴ですかね。
良くわからないけど、ファインプレーでした。
何も考えてないことが、時に思わぬ幸運を導く。
ノープランで成功を収めるという珍事が起こりました。

女史とガンさんの気持ちが伝わってくるシーンもありました。
最終的には比奈子と保よりも、女史とガンさんのほうが、私にとっては大事な存在になってしまいました。

永久君はやっぱり頑張りました。
大事なものを傷つけるのではなく、大事なものを守るという選択をして、大人になったのではないかなと思います。

作中では、最新のテクノロジーを駆使して捜査を行っていますが、最終的に思ったのは、やはり、組織も犯罪者も結局のところ、最後は「個人」なんだということです。

人は人を想うからこそ、事件を解決することができるのだし、未来に目を向けることもできるのではないか?という思いが、今、私の中を巡っています。

ガンさんのスピンオフストーリーに「地球は丸い」という話がありましたが、私もこう思ったんです。
「地球のように丸く収まった」と。

猟奇犯罪という題名の小説ではありましたが、身も蓋もない話では、決してなかったです。
未来に希望のある幸せなお話だったのだと、今は思います。
今後も、厚田班のメンバーの活躍を応援しています。

 

著者あとがき 比奈子シリーズうら話

最後に、内藤了先生のあとがきがありました。
ああ、これで、本当に終わりなんだなと思うと、悲しくもあります。

『猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』は、第21回日本ホラー小説大賞の読者賞受賞で始まったデビュー作なのだそうです。

その後、シリーズ化するにあたっての苦労話が披露されています。
内藤先生は、もともと警察関係にも疎く、地方にお住いのようで、東京都に土地勘もなかったそうです。

つまり新米刑事:比奈子と一緒に、物語の中で成長したということなのでしょう。

内藤先生の生き方を垣間見ることのできるあとがきでした。
どうか、いつまでもお元気で、未来のある小説を書き続けて欲しいです。

内藤先生の作品は、出版社の垣根を越えて、キャラクターたちが別のシリーズ作品に出演していくのが特徴です。

本作の次の作品、『東京駅おもてうら交番・堀北恵平』シリーズにも、比奈子シリーズのキャストが登場しますし、以前、ブログで紹介した『夢探偵フロイト』シリーズにも登場します。

今後も他の作品を楽しみながら、隠れキャストが出演していないかチェックしたいと思います。